格闘技・プロレス

「選手によっては対応しきれない」日韓決戦に臨む井上尚弥が2度の試合中止、10日前に対戦相手急きょ変更で得た絶対王者の“境地”

湯川泰佑輝(THE DIGEST編集部)

2025.01.22

井上は4団体統一3度目の防衛戦に臨む。写真:滝川敏之

 プロボクシングの世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥が1月24日、東京・有明アリーナでWBO同級11位キム・イェジョン(韓国)と防衛戦を行なう。22日に神奈川・横浜市内で記者会見が行なわれ、両者は初めて対面した。急きょ対戦相手が変更になった異例の興行に絶対王者は率直な想いを語った。
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 緊張感が漂うなか、井上は白いジャケットとサングラス姿で登壇した。まず2度の試合中止を経ての開催について、「練習スケジュールもすべて狂いましたけど...」と本音を吐露しつつ、大きな発見があったことを明かした。

「試合日程が1か月ズレましたけど、やってみて思ったのがひとつ。この長期をかけて体を仕上げるのは自分にとってプラスだった。この先のビッグマッチを控えるにあたり、この調整を入れていくのがベストなのかなと分かった。僕にとって、この2度の(試合)中止ということと、延期というのはすごく参考になったスケジュールです」

 当初はIBF、WBO世界同級1位サム・グッドマン(オーストラリア)と昨年12月24日に対戦する予定だったが、同選手が最終スパーリングで左目上を裂傷するアクシデントが起こり、試合10日前に1か月延期が決定した。ところが今月11日にグッドマンが再び同じ箇所を負傷し、試合は突然中止に。グッドマンのリザーブ選手として契約を結んでいたキム・イェジョンが急きょ代役としてリングに上がることになった。
 
 二転三転してスケジュール変更を余儀なくされた井上は1か月の延期がボクサーに与える影響について、「気持ちの持ちようでなんとかなるかもしれないですけど...」と前置きしたうえで、「10日前に相手が変更というのは選手によっては対応しきれない選手もいると思います。ただ、自分はどんな相手でも自分のボクシングを、引き出しを多く持つということを意識してやってきてるので、そこに対しては自分は全く何も思ってません」と泰然自若の構えで日韓決戦に臨む。

 井上は今回のコンディション作りにおいて、2度の試合中止はかえって大きなプラスになったと会見の中で何度も口に出し、ボクサーとしてより進化できたことに手応えを掴んだ。1か月の延期と対戦相手の変更というジェットコースターのようなアクシデントの数々を乗り越え、3度目の防衛戦に臨むモンスターは、「グッドマンとの闘いを楽しみにしてくれていたファンの方には非常に申し訳ない形になってしまったなと思いますが、こうしてキム選手が代役として引き受けてくれたことに対してすごく感謝してます。この試合を自分は最大限のリスペクトとしてバッチリ仕上げました。試合当日は全力で挑みたいと思います」と力強く宣言した。 

取材・文●湯川泰佑輝(THE DIGEST編集部)

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