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バレーボール

疲弊を飲み込んで取材に応じた石川祐希、全冠制覇を目指したペルージャがまさかの国内3連敗、カップ戦を逃したワケをどう捉えているのか?

佳子S.バディアーリ

2025.01.29

敗戦のショックを抱えながらも気丈にインタビューに応えてくれた石川。写真:佳子S.バディアーリ

敗戦のショックを抱えながらも気丈にインタビューに応えてくれた石川。写真:佳子S.バディアーリ

 現地1月25日と26日の2日間にわたりイタリアのボローニャで開催された同国男子バレーボールリーグ スーペルレーガ2024-25シーズンのコッパ・イタリア。日本代表の石川祐希が所属するシル スーザ ヴィム・ペルージャは勝利に王手をかけるも、ラーナ・ヴェローナに逆転を許して準決勝で大会を去ることとなった。

【動画】石川祐希がチームトップの15得点 コッパ・イタリア準決勝

 公式戦全勝で国内と欧州を席巻していたペルージャは、優勝候補の筆頭と見込まれていた。その状況が変わり出したのは、ここ2週間。アウトサイドヒッター(OH)ウクライナ代表オレフ・プロツニスキーが、マッチポイントで大腿部を痛めた後半5節トレンティーノ戦を落として今季初黒星を喫してからだった。週半ばに片道トータル12時間をかけてチェコ共和国まで遠征したCEVチャンピオンズリーグ4回戦は、失セット「0」を更新して全勝を守り8強入りを確定させたが、中2日で臨んだリーグ6節のチヴィタノーヴァ戦は再び黒星。シーズン初の連敗で勝点も逃した。

 プロツニスキーとポーランド代表カミル・セメニウクに石川が加わったOHトライアングルは、ペルージャのハイレベルな攻撃維持の要だった。しかし、その中核の負傷離脱で、残る2選手がほぼ交代なしで毎試合にフル出場。対戦相手の戦略に有利な状況下、不運にも他のポジションにまで故障者の連鎖が発生するなど、ペルージャは万全とほど遠いチームコンディションでコッパ・イタリア準決勝の日を迎えていた。

 1セット目は力づくではなく慎重に試合を進めて先取。続くセットは劣勢を終盤の劇的な巻き返しで跳ね除けて決勝進出に王手をかけた。ところが、以降はほんの少し前まで全勝街道を突き進んでいた本来の姿は影を潜め、フルセットの末に逆転を許して今季2冠目を狙うはずの舞台を残して大会を去った。ヴェローナのエース9本、ブロック14本に対して、ペルージャはエース2本、ブロック4本。最終セットに至っては、アタックの決定本数が5本と相手の半数に留まった。

 試合を終えてしばらくの間、初4強で決勝への切符を掴み、歓喜に沸く相手チームを見つめていたように見えた石川。コート上でマイクを向けるのが常だが、ストンとベンチに腰かけた後、微動だにしない背中を見て声をかけることができずにいると、程なくロッカールームへ引き上げていった。

 バックヤードへ急いで移動。いつ出てくるのか分からないまま待ち続けた。かなりの時間が経過して現われた石川は、敗戦のショックを飲み込んで取材に応じた。日本の記者お二人の質問に答えて試合を振り返った後、こちらへ視線を送ってくれたところでインタビューを開始。OH2人で臨むことを余儀なくされている今、直面している “イシカワ対策”について、尋ねようと決めていた。直近のチヴィタノーヴァ戦に続き、このコッパ戦でもヴェローナの監督はタイムアウトで石川へのブロックを幾度となく確認。相手の徹底マークに対してこう述べた。

「怪我人が出ているのは仕方ないので、いるメンバーの僕とセメニウク選手でしっかりとどんな状況でも乗り切らないといけない。今までは(OH)3人でうまく誰かが悪かったら替わって入ることができましたけど、(この先も含め)トレントとの試合が終わってから、そういうわけにはいかないので。しっかりとミスなくというか、ポジション的にはまあ難しくはないですけど、しっかり調整しないといけないなと思います」

 このインタビュー前に、イタリア公営放送の解説者で90年代同国代表の主将でもあるアンドレア・ルッケッタ氏に取材。いつもポジティブな評価をくれるが、「辛口でも構わない。ペルージャが難局を打開するため、イシカワがすべきことは?」と尋ねた。

「OH3人が揃っての交代リレーは、相手に困難をもたらすことが容易。それぞれがコンディションに余裕を持てベストなパフォーマンスを出せるからだ。3選手の中で、より安定感のあるプロツニスキーがコートに立てないこの時期、ユウキとセメニウクは今以上に存在感を示さなければいけない。準決勝でユウキはギアを上げなければいけなかったが、停滞してしまった。その原因の一つは、フィジカル面で疲れが見えたこと。ボールへの反応もいつもとは違っていた。僕は目を疑ったよ。なぜならユウキはこれまで一定のレベルを絶対に維持してきたし、パフォーマンスがそれ以下に下降するのを見たことがなかったからね。でも、今日の試合は、(司令塔のイタリア代表シモーネ・ジャンネッリが)もっとシステムを活用すべきところでミドル起用が少なく、配球の質にも問題が生じていたことを(石川の評価をする上で)考慮するべきだと思う」

 石川にルッケッタ氏の言葉を伝えると、「(ジャンネッリとの)コンビはちゃんと合っていますし、僕の打ち方が悪かっただけなので。そこの部分の修正ができなかったことがこの結果になったと思います」と自身を厳しく評価した。

 全冠達成を目指すチームを任されての準決勝敗退。少し潤んだように見えた瞳が、3季連続でミラノ時代に味わったそれとは異なる心情を映していた。

「勝つしかない。結果を出して上に行くしかない」

 石川は今季開幕から繰り返してきた決意を残して、帰路に着くクラブバスへと向かって行った。

 悔しさを抱えたペルージャと石川を待つ次なる試合は、CEVチャンピオンズリーグ4回戦の最終戦。トルコリーグ2位のハルクバンク・アンカラ(日本時間1月30日午前4時45分開始予定)とのホーム戦に臨む。

取材・文●佳子S.バディアーリ
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