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格闘技・プロレス

上谷沙弥と中野たむの「敗者引退マッチ」だけではなかった…4.27横浜アリーナ大会がより深く心に刻まれる興行となったワケ【スターダム】

橋本宗洋

2025.05.01

「敗者引退マッチ」は上谷(左)に軍配。中野は引退を余儀なくされたが、試合後には両者の想いが溢れた。写真:橋本宗洋

「敗者引退マッチ」は上谷(左)に軍配。中野は引退を余儀なくされたが、試合後には両者の想いが溢れた。写真:橋本宗洋

 4月27日、スターダム横浜アリーナ大会のメインイベントで上谷沙弥と中野たむが対戦し、勝利した上谷がワールド・オブ・スターダム王座を防衛した。この試合は敗者引退マッチとして行なわれ、敗れたたむはその場で現役引退となっている。

 もともとはアイドル志望の上谷を、たむがプロレスに誘った“師弟関係”。だが上谷がヒールに転向すると愛憎がもつれにもつれ、敗者退団マッチ(敗れたたむがスターダムを退団しフリーに)を経て、引退もかけてのタイトルマッチに。


 最後はたむの必殺技であるトワイライト・ドリームを上谷が決めて勝利。試合後は涙が止まらなかった。ヒールとしての“キャラ”を超えて感情が溢れ出す。
 
「今日、お前のすべてを奪って分かった。私はお前のことが大好きだ。あんたに出会えて幸せだよ、バーカ!」

 選手として最後のマイク、たむは言った。

「たむも宇宙一、幸せなプロレス人生だった」

 これ以上ないほどドラマティックでエモーショナルな引退劇。正統な引退ロード、引退試合、引退セレモニーといった段階を踏まないからこそのインパクトでもあった。

 スターダムの岡田太郎社長は、28日の一夜明け会見で、この敗者引退マッチは団体側が「やらせたもの」だというファンの見方を否定している。あくまで選手の希望を受けてのことだと。最終的にマッチメイクした責任はあるが、引退をかけて世間と向き合った選手たちの覚悟まで軽く見られたくはないということだろう。

 プロレスはスポーツでありエンターテインメント。しかし完全な“作りごと”とも言えない。団体だけでなく選手にもやりたいこと、望む方向性がある。たむは一昨年、負傷欠場中に引退を決意。団体側に伝えてもいる。それこそ命懸けでプロレス人生を燃やしてきたたむについて、岡田社長は「ゴールを探している」と見ていた。

 だから今回の引退をかけての試合にもOKを出したのだという。たむも上谷も業界屈指の人気選手。できるだけ長く現役を続けてくれたほうが団体の利益になる。それでも選手の希望と覚悟を優先させたのだ。
 
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