格闘技・プロレス

「誰かの代わりなんていらない」「私がいれば大丈夫」上谷沙弥&スターライト・キッド、激動のスターダムを支える“新たな顔”の心意気

橋本宗洋

2025.06.04

中野たむとの引退を賭けた激闘を制した上谷。王者として、新たなエースとしてスターダムに君臨する。写真:橋本宗洋

 4月から5月にかけて、スターダムは大きな転機を迎えることになった。少なくとも、プロレスファンはそう思っていたはずだ。

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 4月27日のビッグマッチ、横浜アリーナ大会。メインイベントで上谷沙弥に敗れた中野たむが引退した。朱里にIWGP女子王座を奪われた岩谷麻優は、大会翌日に退団を表明するとマリーゴールドに入団。また白川未奈がアメリカのAEWに移籍し、舞華はケガにより長期欠場。トップ選手たちが一気に抜けた状態で、スターダムは5月を迎えた。
 
 だが、大幅な"戦力ダウン"にもかかわらず、5月11日の後楽園ホール大会は1503人と超満員に。メインイベントでは上谷が今年のシンデレラ・トーナメント優勝者である玖麗さやかを下し"赤いベルト"ワールド王座防衛に成功した。

 2023年12月デビュー、まだ新人の玖麗だが中野たむがそのポテンシャルを認めたことでも知られる。この日も敗れはしたが、必死にチャンピオンに食い下がった。逆に上谷は風格さえ感じさせる闘いぶり。試合後には玖麗に「誰かの代わりになろうなんてしなくていい。今日みたいに玖麗さやかという存在をリングで証明し続けろ」という言葉を送っている。単なるヒールではなく、エースでもある上谷からのエールと言ってよかった。

 挑戦表明から前哨戦、そしてタイトルマッチと、玖麗は「精神的にも肉体的にも試練の日々」を過ごしてきたという。やめた人間の分も自分が頑張らなければと、勝手に背負い込んでしまっていた。そのことで成長した部分もあったが、上谷はそんな玖麗に自分らしく闘うことを説いたのだ。チャンピオンらしい姿としか言いようがない。

 さらに5月21日にも、スターダムは後楽園大会を開催している。ここまで上谷をメインに満員を続けてきたが、今回のメインはスターライト・キッドvsHANAKOのワンダー・オブ・スターダム 王座戦。しかも平日だった。

「今の勢いを途切れさせたくない」

 チャンピオンのキッドにはそんな思いもあったという。結果、観衆は1176人。平日としてはかなりの高水準だ。これで満足はできないとキッド。ただ、中野たむや岩谷麻優が抜けたマイナスより、上谷とキッドがチャンピオンとして君臨するスターダムの魅力のほうが優っているというのが(客入りから見た)ファンの評価ではあるはずだ。
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キッドにとっては「小さくても勝てる」ではなく「小さくても強い」ことが大事なのだ