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競馬

【名馬列伝】日本競馬を代表する“華麗なる一族”の名牝ダイイチルビー。90年代前半に異彩を放った快速牝馬の蹄跡

三好達彦

2025.07.06

スプリンターズSを制したダイイチルビー。GⅠ2勝目を飾った。写真:産経新聞社

スプリンターズSを制したダイイチルビー。GⅠ2勝目を飾った。写真:産経新聞社

 日本を代表する牝系に『華麗なる一族』と呼ばれるファミリーがある。荻伏牧場(北海道・浦河町)が1957年に英国から輸入したマイリー(父Supreme Court)に端を発するこの牝系からはスピードに秀でた馬が続出し、キユーピット(父ニアルーラ/阪神牝馬特別)、ヤマピット(オークスなど重賞5勝)、ミスマルミチ(父ネヴァービート)を経て、この一族の名を大きく広めたイットー(父ヴェンチア/高松宮杯、スワンステークス)へと繋がる。

 ちなみにこのファミリーに『華麗なる一族』という名を付したのは詩人の志摩直人で、当時ベストセラーとなり、ドラマ化もされた同名の小説から取られたと言われる。

 イットーは母として2頭の素晴らしい優駿を送り出す。1977年生まれのハギノトップレディ(父サンシー)は桜花賞、京都牝馬特別、エリザベス女王杯、高松宮杯を制し、1979年生まれのハギノカムイオー(父テスコボーイ)は宝塚記念など重賞6勝を挙げる。

 そして牝駒のハギノトップレディは『華麗なる一族』の集大成とも言うべき名馬を産み落とす。現役時代には”天馬”と呼ばれ、内国産種牡馬となってからは優秀な産駒を数多く輩出することから”お助けボーイ”とも言われたトウショウボーイを父とするダイイチルビーがその馬だ。
 
 最上級の血統背景のもとに生まれたダイイチルビーだが、大きな欠点があった。左右の蹄の大きさが著しく違っており、本馬を管理することになる調教師の伊藤雄二は初見の際に、競走馬になることさえ危ぶむほどのバランスの悪さを嘆いたという。それでもダイイチルビーの管理を引き受けたのは、若駒離れした動きの良さに心酔していたからで、この才能を開花させるには、時間をゆっくりかけて育てることが必須だとし、オーナーの辻本春雄にはその点を念押ししたと言われる。

 足元の具合と相談しながら仕上げられたダイイチルビーは1990年の2月、3歳になってからデビューする。新馬戦を2着に5馬身を付けて逃げ切り勝ちを収め、2戦目のアネモネ賞(500万下、現1勝クラス)を先行抜け出しで快勝。そこで陣営は桜花賞(GⅠ)に出走登録を行なうが、残念ながら抽選に漏れて出走は叶わず。この際には当時、サラブレッドクラブ・ラフィアン代表の岡田繁幸はマスコミを通じて、「ダイイチルビーほどの血統背景を持つ馬を桜花賞に出さないのは日本競馬にとっての大きな損失。勝ち目がないと思う陣営は、彼女を出すために出走回避すべき(要旨)」との論をぶち上げたことが筆者には強く印象に残っている。

 その後、忘れな草賞(OP)を2着としたダイイチルビーは、続くサンスポ賞4歳牝馬特別(GⅡ)で2着に入ってオークス(GⅠ)への出走権を確保。しかし本番は、出遅れが響いてエイシンサニーの5着に終わった。そして秋はローズステークス(GⅡ)を5着としたのち、右後肢にフレグモーネ(化膿性炎症)を発症したため3歳のシーズンを切り上げた。

 復帰は翌1991年のこと。約2か月半の休養が成長を促したか、これ以降、ダイイチルビーはレース間隔を詰めて使えるようになった。時が満ちるまで待ち続けた関係者の我慢が春シーズンの締め括りに結実する。
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