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ゴルフ

「もう勝てないのかと思っていた」5年ぶりVの渡邉彩香が経験した“地獄“と、“復活“までの苦闘の日々

山西英希

2020.06.29

 もちろん、渡邉なりに打開策を探していた。それまでコーチに習うことがなかったが、昨年6月から中嶋規雅コーチに教わり始め、秋口から本格的なスイング改造に着手した。さらに、同じ時期にメンタルトレーニングも始めたという。

「鈴木颯人さんという方で、著書を読んだのがきっかけでお話を聞きにいくようになりました」

 サーフィンの選手へのアドバイスで、サーフボードの上に立ったら落ちたくないと思うのではなく、立ち続けることを意識するべきだという内容だった。「そのことを鈴木さんに話したら、ゴルフも同じ。曲げたくないと思わずに、ボールに対してハードヒットを心がけろとアドバイスされました」。以来、曲がることへの不安は消え、昔のように大好きなドライバーを思い切り振れるようになった。
 
 ドライバーショットに自信を持ち始めたことで、昨年の最終予選会も19位で突破した。手応え十分で今季を迎えたが、開幕戦が約4か月遅れても影響がないことを証明するかのように、この試合ではドライバーショットが好調だった。最終日も、勝負どころの16、17番でドライバーを振り切り、連続バーディにつなげ、鈴木に追いついた。

「リオ五輪の代表を逃した悔しさを晴らしたいとずっと思っていました。東京五輪とはあまりにもかけ離れた位置にいますが、来年に延期になったことで、もしかしたらがあるかもしれません。今後も一生懸命に頑張ろうと思います」

 あきらめた夢に向かってもう一度歩き出すことを誓った渡邉。1勝だけでは完全復活とは言えないだろうが、大型プレーヤーとして期待されていた選手が地獄まで落ち、そこからはい上がってきたのは事実。どこまで夢に近づけるのか今後も注目していきたい。

取材・文●山西英希

著者プロフィール/平成元年、出版社に入社し、ゴルフ雑誌編集部所属となる。主にレッスン、観戦記などのトーナメントの取材を担当。2000年に独立し、米PGAツアー、2007年から再び国内男子、女子ツアーを中心に取材する。現在はゴルフ雑誌、ネットを中心に寄稿する。

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