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囁かれた限界説にコロナの追い打ち…ベテラン石川佳純が見せつけた“強さの証明”「今は気にならなくなった」

佐藤俊

2021.01.30

 そうした練習の成果が今回の試合に出ていた。伊藤との試合では、動きでは負けていなかった。ラリーでは相手のコースを予測し、コースを変化させたり、自ら積極的に厳しいコースに打っていた。練習が十分にできていたせいか、それが自信の裏付けとなり、メンタルもしっかりと整えられていた。

 セットカウントが3-3になり、ファイナルでは9-6から3ポイント連続で取られて9-9になった時はさすがに「あちゃー」と思ったそうだが、それでも動じなかった。最後まで自分を貫くというメンタルの強さを見せ、それが優勝を決めたフォアのストレートにつながった。

「1ゲーム取られた時に『ダメだ、全然追いつけない』と正直思ったんですけど、作戦変えていけばまだまだチャンスあると思ったし、試合前に自分に『絶対に最後まで諦めない』というのを言い聞かせてコートに入った。相手がいくら強くても絶対に諦めないというのが今日の勝因だと思います」

 世界ランキング3位の伊藤を破り、石川は自らの強さを証明し、様々な声を封じ込めた。競技の頂上に立つ選手はいつも賞賛と批判の嵐の中にいるが、石川は伊藤に勝ったことでそこから抜け出した。
 
「昔は気になっていた部分も今は気にならなくなったし、逆に自分がそうやって頑張って結果が出た時に、同じ思いをしている人にもちょっと勇気を届けたいなと思うし、まだまだやれる、まだまだやりたいというふうに思っています」

 やれることを世界で証明するのが、東京五輪の舞台になる。今は、コロナ禍の影響で開催の可否についていろんな声が世界中から流れているが、石川は開催されることを信じて、東京五輪にむけて集中していく。

「五輪は最高の舞台なので、すごく出たいし、あると信じているので、それに向けて一生懸命やっているプレーの姿を(今回)テレビを通して見てもらえたのはすごく嬉しいなと思います。完全な形でなくてもいいので五輪で試合がしたい。(東京五輪に向けて)私は頑張り続けるしかないと思っています」

 金メダル獲得のために全日本選手権をいう山を残り越え、さらに成長すべく前に進んでいる。世界で頂点に立つのは容易ではないが、石川は、こう思っているのではないだろうか。東京五輪女子シングルス、中国勢を打ち破り、金メダルを争う舞台で、自分が伊藤と全日本選手権に続いて再度、まみえる――。

「誰かのために」だけではなく、こうした思いもまた強くなるためには必要なことである。

文●佐藤俊(スポーツライター)

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