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フィギュア

「引退したほうがいいのかな」――悩める宇野昌磨がつかんだ悲願の世界王者。背景にあった共に歩んだ名手の存在

長谷川仁美

2022.04.10

喜びに満ち溢れた演技を披露した宇野。先月行なわれた世界選手権では、SPもFSも堂々の1位に入った。(C)Getty Images

喜びに満ち溢れた演技を披露した宇野。先月行なわれた世界選手権では、SPもFSも堂々の1位に入った。(C)Getty Images

 そのランビエール氏のもとで練習することで次第にスケートへの気持ちを取り戻していった宇野は、あるとき、「君が世界一になるには、何が必要だと思う?」と問われたという。「ジャンプ」と答えたが、その問答以上に宇野の胸に響いたものがあった。

 ランビエール氏が、「僕(宇野)が世界一になれる実力を持つことができると信じてくれている」ということだった。問いの向こうにあるコーチのそんな思いに触れ、宇野は、「期待に応えたい」と決意を強くした。

 2021-22シーズンの宇野は「世界のトップレベルで戦える選手になりたい」と口にし、そのためには、FSの『ボレロ』を、4種5つの4回転を入れる高難度ジャンプ構成で行くと決めた。そして、「どんなに失敗しようが打ちのめされようがやりたい。1シーズンを通して成長し、このプログラムをできるレベルになって世界と戦いたい」と、大会のたびに跳び続けた。

 それは、「ここ数年、なかなか成績が出ないなかでも、応援してくださった皆さんだったり、一番自分が何もできていなかったときにお世話になったステファン氏のもとで、素晴らしい成績を残したい」という思いがあったからだ。
 
 その思いの結実のひとつが、世界選手権でのFS最後のステップシークエンスだろう。よく動き、身体の隅々まで気持ちが満ち満ちていた。実際、9人のジャッジのうち6人が「+5」、3人が「+4」と、かなり高く評価している。

 この大会で宇野は、SP109.63点、FS202.85点、総合312.48点と、3つの自己ベストを更新した。SPもFSも1位の優勝で、今シーズンを終えた。自分を信じてくれるコーチの、その期待に応えたいという思い。人間の根源的な願望や喜びのようなものを支えにした演技。思えばそれは、とても宇野らしいスケートだ。

「やっと僕のフィギュアスケートが、今年また再発進したと思っているので、これからもっと成長を見せられるかなと思っています」

 世界選手権優勝もひとつの通過点として、「自分でもどこにあるかわからない」「もっと成長した先にあると思っている」ゴールにむかって、来シーズンも宇野は、ランビエール氏とともに歩んでいく。

取材・文●長谷川仁美

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