1995年の札幌でデビューしたエアグルーヴはデビューの新馬戦(芝1200m)こそ2着に取りこぼしたものの、続く2戦目の新馬戦(芝1200m)では2着のダイワテキサスに5馬身もの差をつけて圧勝した。
いったん休養をはさんで次に出走したのは、オープンのいちょうステークス(東京・芝1600m)。ここでのパフォーマンスが、同日に行われる天皇賞・秋のために来場した満場の観衆を驚かせることになる。
最後の直線の半ばあたりで前を塞がれ、鞍上の武豊騎手が手綱を引いて立ち上がるほどの大きな不利を受けたエアグルーヴだったが、態勢を立て直すと一気に末脚を爆発させて差し切り勝ちを収めてしまったのである。
「これは普通の牝馬じゃない、牡馬にも勝てる馬だ」
マックスビューティ(牝馬クラシック二冠)、シャダイカグラ(桜花賞)、ダイイチルビー(安田記念、スプリンターズステークス)など、数々の名牝を育て、”牝馬の伊藤”とまで呼ばれた伯楽をしてそう評さしめたのが、いちょうステークスで見せたエアグルーヴの驚異的な能力とハートの強さだった。
続く阪神3歳牝馬ステークス(GⅠ、阪神・芝1600m/現「阪神ジュベナイルフィリーズ」)はやや仕掛けが遅れてビワハイジの2着に敗れたが、それでも彼女はこの年度のJRA賞で最優秀3歳牝馬(現「2歳牝馬」)に選ばれた。
翌1996年はチューリップ賞(GⅢ、阪神・芝1600m)から始動すると、2着のビワハイジを5馬身も突き放して楽勝し、前年末のリベンジを果たした。
これで桜花賞を取るのは間違いない、と思われたエアグルーヴだったが、チューリップ賞ののちに微熱を出したことから、桜花賞を回避することになる。無理をすれば使えなくもない状態だったが、先々を見据えていた伊藤とオーナーの吉原は潔くそう決断したのだという。
熱発明けで”ぶっつけ”でのオークス参戦となったエアグルーヴだったが、桜花賞馬ファイトガリバーなどを抑えて単勝1番人気に推され、あらためてファンの評価の高さを示した。
そしてレースはファンの厚い支持に応える、圧倒的な内容となった。
中団の前目を進んだエアグルーヴは第3コーナーから徐々に位置を押し上げ、直線でスパートに入ると一気に先頭へと躍り出て、後方から追い込んだファイトガリバーに1馬身半差をつけて、母ダイナカールも先頭で駆け抜けたゴールをラクな手応えのまま走り抜けた。これはオークス史上2例目となる母娘制覇であった。
エアグルーヴはゆっくりと休養を取り、秋華賞(GⅠ、京都・芝2000m)にも”ぶっつけ”での参戦となったが、意に反して10着に大敗。レース後に右前肢の骨折が判明し、長期休養に入ることになる。
<前編・了>
文●三好達彦
”米国競馬の祭典”での快挙、ソダシ人気の過熱に『ウマ娘』の大ヒットも
【名馬列伝】坂路で鍛え上げられた“逃げ馬”ミホノブルボン。デビュー戦は致命的な出遅れも10頭以上を一気に――[前編]
【名馬列伝】“坂路の申し子”ミホノブルボンの強烈な輝き! 「無敗のダービー馬」はなぜ悲劇的な敗戦を喫したのか?[後編]
いったん休養をはさんで次に出走したのは、オープンのいちょうステークス(東京・芝1600m)。ここでのパフォーマンスが、同日に行われる天皇賞・秋のために来場した満場の観衆を驚かせることになる。
最後の直線の半ばあたりで前を塞がれ、鞍上の武豊騎手が手綱を引いて立ち上がるほどの大きな不利を受けたエアグルーヴだったが、態勢を立て直すと一気に末脚を爆発させて差し切り勝ちを収めてしまったのである。
「これは普通の牝馬じゃない、牡馬にも勝てる馬だ」
マックスビューティ(牝馬クラシック二冠)、シャダイカグラ(桜花賞)、ダイイチルビー(安田記念、スプリンターズステークス)など、数々の名牝を育て、”牝馬の伊藤”とまで呼ばれた伯楽をしてそう評さしめたのが、いちょうステークスで見せたエアグルーヴの驚異的な能力とハートの強さだった。
続く阪神3歳牝馬ステークス(GⅠ、阪神・芝1600m/現「阪神ジュベナイルフィリーズ」)はやや仕掛けが遅れてビワハイジの2着に敗れたが、それでも彼女はこの年度のJRA賞で最優秀3歳牝馬(現「2歳牝馬」)に選ばれた。
翌1996年はチューリップ賞(GⅢ、阪神・芝1600m)から始動すると、2着のビワハイジを5馬身も突き放して楽勝し、前年末のリベンジを果たした。
これで桜花賞を取るのは間違いない、と思われたエアグルーヴだったが、チューリップ賞ののちに微熱を出したことから、桜花賞を回避することになる。無理をすれば使えなくもない状態だったが、先々を見据えていた伊藤とオーナーの吉原は潔くそう決断したのだという。
熱発明けで”ぶっつけ”でのオークス参戦となったエアグルーヴだったが、桜花賞馬ファイトガリバーなどを抑えて単勝1番人気に推され、あらためてファンの評価の高さを示した。
そしてレースはファンの厚い支持に応える、圧倒的な内容となった。
中団の前目を進んだエアグルーヴは第3コーナーから徐々に位置を押し上げ、直線でスパートに入ると一気に先頭へと躍り出て、後方から追い込んだファイトガリバーに1馬身半差をつけて、母ダイナカールも先頭で駆け抜けたゴールをラクな手応えのまま走り抜けた。これはオークス史上2例目となる母娘制覇であった。
エアグルーヴはゆっくりと休養を取り、秋華賞(GⅠ、京都・芝2000m)にも”ぶっつけ”での参戦となったが、意に反して10着に大敗。レース後に右前肢の骨折が判明し、長期休養に入ることになる。
<前編・了>
文●三好達彦
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