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ラグビー

スーパーラグビー強豪相手の快勝劇を引き寄せた堀江翔太の金言。今季限りで引退の38歳が試合前にかけた言葉と後輩たちへのメッセージ

向風見也

2024.02.07

 今回は51分に登場した。坂手に代わってフッカーに入る。システムを首尾よく運用すべく、常に声を出した。「インサイ(ド)OK! インサイ(ド)OK!」などと自分の立ち位置を伝えたり、味方へ指示を出したり。
 
 個対個でも光った。

 ファーストプレーではパスをもらうや、対面の防御の右肩へ左腰を当てた。軸を保って前傾し、低い姿勢で突っ込んできたタックラーを仰向けにさせてしまった。

 守っては接点へ首尾よく絡んだ。ひとつ反則を取られたものの、それ以外のシーンでは総じて向こうのアタックのテンポを鈍らせた。

 やみくもに頭を突っ込むのではなく、「レフリーとコミュニケーションを取りながらやっている」。自分にとっての正しい体勢で密集に腕、肩を差し込みながら、近くに立つレフリーに視線を向ける。

「目を見ながら、しゃべりながら、あかん(そのままでは反則を取る)と言われればやめます。まず、足の運び、身体の使い方で、どんだけ強い姿勢でいられるかを意識する。それができるから、フィジカル的にそこ(球際)に入れて、レフリーの顔を見ながら(プレーを続行するか、やめるかを)判断できる」

 殊勲のボーシェとともにジャッカルを決め、自陣22メートル線付近右でのピンチを防いだのは62分。チーフス側のサポート役に左足を掴み上げられても、地上の楕円球に手のひらがついたままだった。
 
「普通に、ボールが見えたんで。2人なんで、獲れましたね。へへへへ」

 信頼する佐藤義人トレーナーと二人三脚で、力任せにならずに力強さを示せるよう身体を鍛える。衝突時の身のこなしと相まって、海外選手とのコンタクト合戦を凪のように支配できる。

 残念なのは、この人が今季限りで引退することだ。開幕前に宣言していた。後輩へのメッセージはこうだ。

「結構、僕、アタックでもディフェンスでもいろんな小技をしているんで、盗んで欲しいです。それをしているのかどうかもわからんような小技です。聞いてきてくれたらバンバン教えますよ。でも、それが重要かどうかは、後輩がそう思うかどうか。あれやれ、これやれとは言えない。向こうから来てくれないと」

 中断中の国内リーグワンは、2月17日に再開する。すべてのプレーヤーにとっての教科書となりうる仙人がファンにパフォーマンスを見せるのは、長くてあと12試合だ(レギュラーシーズン10戦とプレーオフ2戦)。

 チームメイトでなくとも、堀江の仕事ぶりを目で「盗」むのは楽しい。

取材・文●向風見也

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