その日はやってきた。5月26日。リーグワンのレギュラーシーズンで無敗のワイルドナイツが、東京・国立競技場でプレーオフ決勝戦に臨んだ。
リザーブの堀江が登場したのはハーフタイム明け。対する東芝ブレイブルーパス東京を6―10と4点差を追っていた頃だ。
堀江が入ると、全体の様子が変わった。
グラウンド中盤で大外のスペースを破られる機会は、前半に3度あったのに対し、後半はわずか1回。それ以外の場面では、チームが誇る防御システムが機能した。
1人目が走者に刺さり、2人目が球に絡み、その間、残った選手の大半が横一列に並んだ。向こうにキックを選ばせたり、隙を見てターンオーバーを決めたり。堀江自ら球をもぎ取ることもあった。
シーソーゲームにあって、24分には13―17と差を詰めた。
その直後、自陣のディフェンスシチュエーションであの「ロッキー」ことボーシェーがジャッカル。ペナルティキックを得て陣地を挽回し、28分、20―17と勝ち越した。
守りで流れを引き寄せた。谷と同じく堀江と親しいスタンドオフの松田力也が「前半は僕たちも熱くなりすぎて少し(中央に)寄り気味で。後半はそれが元に戻った。冷静になれた」と振り返る傍ら、堀江はこの調子だ。
「声かけて、指示出して、常にディフェンスし続ける。そうすればチャンスはあるかなって」
万人が振り返るのは、最後のワンシーンだろう。
20―24と再び勝ち越されていた後半39分頃。ワイルドナイツの長田智希がインゴールを駆け抜け、逆転したかに思われたところで時間が止まった。
フィニッシュする少し前のフェーズで、堀江の放ったパスが前に流れていた。テレビジョン・マッチ・オフィシャルというビデオ判定がなされた。
スローフォワードの反則が取られ、トライは取り消された。
しかしその1本においても、ぶれぬ基本の型は見られた。直線的に走って防御を引き寄せながら、スペースへ球をさばく技術だ。投げた瞬間に相手のタックルにひっくり返され、かつ、受け手が無人のスペースを駆け抜けたことからも明らかだ。
何より例の局面を前後し、堀江がどれだけサポートを試み、どれだけボールをさばいていたか。動きの質と量は圧巻だった。
ノーサイド。現役最後のゲームは、今季初黒星に終わった。最後の最後まで上手くなろうとしていたその人は、「やり切ったというか、何か、すがすがしい感じで」と笑った。
取材・文●向風見也(ラグビーライター)
【決勝ハイライト】堀江翔太、ラストゲームで奮戦!
リザーブの堀江が登場したのはハーフタイム明け。対する東芝ブレイブルーパス東京を6―10と4点差を追っていた頃だ。
堀江が入ると、全体の様子が変わった。
グラウンド中盤で大外のスペースを破られる機会は、前半に3度あったのに対し、後半はわずか1回。それ以外の場面では、チームが誇る防御システムが機能した。
1人目が走者に刺さり、2人目が球に絡み、その間、残った選手の大半が横一列に並んだ。向こうにキックを選ばせたり、隙を見てターンオーバーを決めたり。堀江自ら球をもぎ取ることもあった。
シーソーゲームにあって、24分には13―17と差を詰めた。
その直後、自陣のディフェンスシチュエーションであの「ロッキー」ことボーシェーがジャッカル。ペナルティキックを得て陣地を挽回し、28分、20―17と勝ち越した。
守りで流れを引き寄せた。谷と同じく堀江と親しいスタンドオフの松田力也が「前半は僕たちも熱くなりすぎて少し(中央に)寄り気味で。後半はそれが元に戻った。冷静になれた」と振り返る傍ら、堀江はこの調子だ。
「声かけて、指示出して、常にディフェンスし続ける。そうすればチャンスはあるかなって」
万人が振り返るのは、最後のワンシーンだろう。
20―24と再び勝ち越されていた後半39分頃。ワイルドナイツの長田智希がインゴールを駆け抜け、逆転したかに思われたところで時間が止まった。
フィニッシュする少し前のフェーズで、堀江の放ったパスが前に流れていた。テレビジョン・マッチ・オフィシャルというビデオ判定がなされた。
スローフォワードの反則が取られ、トライは取り消された。
しかしその1本においても、ぶれぬ基本の型は見られた。直線的に走って防御を引き寄せながら、スペースへ球をさばく技術だ。投げた瞬間に相手のタックルにひっくり返され、かつ、受け手が無人のスペースを駆け抜けたことからも明らかだ。
何より例の局面を前後し、堀江がどれだけサポートを試み、どれだけボールをさばいていたか。動きの質と量は圧巻だった。
ノーサイド。現役最後のゲームは、今季初黒星に終わった。最後の最後まで上手くなろうとしていたその人は、「やり切ったというか、何か、すがすがしい感じで」と笑った。
取材・文●向風見也(ラグビーライター)
【決勝ハイライト】堀江翔太、ラストゲームで奮戦!
関連記事
- 「ちょっと嬉しい気分もありますけどね」引退発表の堀江翔太、W杯4回出場の38歳がラストマッチを前に明かした胸中とは?【リーグワン決勝】
- 失意の準優勝から1年…南ア生まれ豪州育ちの日本代表BKが、再びプレーオフ決勝へ辿り着くまでの紆余曲折【リーグワン】
- 「ラグビーの原点」から逃げなかったBL東京、後半の逆転劇につながった“モメンタム”の源流【リーグワンPO準決勝】
- 経験豊富なNZ代表が仲間たちへ伝えた簡潔にして本質的な言葉… 主将リーチも「勉強になった」と頷くリッチー・モウンガの考え【リーグワン】
- 経験豊富なNZ代表が仲間たちへ伝えた簡潔にして本質的な言葉… 主将リーチも「勉強になった」と頷くリッチー・モウンガの考え【リーグワン】