いずれにせよ確かなのは、今度の一歩がもたらすメリットの大きさだ。
トゥールーズは同国トップ14の23年度王者。同じポジションにはフランスの至宝たるアントワーヌ・デュポンがいて、司令塔団を組むスタンドオフではデュポンとフランス代表を支えるロマン・ンタマックがプレーする。
まもなく齋藤は、世界有数の実力者と切磋琢磨できる。「9番の1番手を狙う」と宣言しつつ、ライバルから吸収したい点をこう整理する。
「僕の印象としては、フランスの選手は——特にデュポンは——チームのルールのなかでも(個人の)閃きを大事にしている。そういった部分は、今後の自分が伸ばしていきたい部分です」
さらに現地では、長丁場のリーグ戦のほか他国を交えたチャンピオンズカップにも挑める。デュポンがこの夏、パリ五輪の男子7人制ラグビーへ出ることと相まって、東洋の騎士も一定の出番を得られそう。
加えて欧州では、キック主体の試合運びが目立つ。天候の不安定さやぶつかり合いが好まれる文化的背景もあり、接点の後ろからスクラムハーフが足を振り上げ、味方がその弾道を追う流れが多く見られる。
高速展開の得意な齋藤が現地のカルチャーに触れれば、プレーの幅を広げられるのではないか。本人は頷く。
「ワールドカップを経験し、9番(スクラムハーフ)からのキックが重要になっていると感じていて。あとは――最近、試合では蹴ってないですけど――プレースキックも自分の強み。フランスでは9番が積極的にプレースキックを蹴るイメージもあるので(取り組みたい)」
つまり今度の齋藤は、自らの思う「ワールドクラス」へ近づくための最善の環境を得たと言える。
海外に憧れ始めたのは早大3年時。日本代表候補の集うナショナル・デベロップメント・スコッドというプログラムでニュージーランドに渡り、南半球スーパーラグビーのクラブの予備軍と戦ったのがきっかけだ。
当時から勤勉さで鳴らした。休息時にポテトチップスを口にするにしても、過剰に油を使っていないお取り寄せ品に限っていた。自分の未来をよりよいものにするには、目の前の1日を充実させるべきだと知っていた。
特にここ数か月は、今回の目標を叶えるべく「先行投資」にも努めた。
今年5月までの国内シーズン中は、所属先の東京サントリーサンゴリアスで全体練習の合間に走り込みを挟むなどして強みの運動量に磨きをかけた。おもに、もっともハードな練習のある水曜には身体を苛め抜いた。
一つひとつの攻防でのエネルギー消費が激しくなる海外勢との戦いでも、最後までハイパフォーマンスを貫けるようになるのが狙いのひとつだった。
チャンスを探ると同時に、チャンスを活かすための準備を施してきた。
慎ましくとも堂々とした態度で海を渡る。
取材・文●向風見也(ラグビーライター)
【動画】世界へはばたく齋藤直人、リーグワンプレー集!
トゥールーズは同国トップ14の23年度王者。同じポジションにはフランスの至宝たるアントワーヌ・デュポンがいて、司令塔団を組むスタンドオフではデュポンとフランス代表を支えるロマン・ンタマックがプレーする。
まもなく齋藤は、世界有数の実力者と切磋琢磨できる。「9番の1番手を狙う」と宣言しつつ、ライバルから吸収したい点をこう整理する。
「僕の印象としては、フランスの選手は——特にデュポンは——チームのルールのなかでも(個人の)閃きを大事にしている。そういった部分は、今後の自分が伸ばしていきたい部分です」
さらに現地では、長丁場のリーグ戦のほか他国を交えたチャンピオンズカップにも挑める。デュポンがこの夏、パリ五輪の男子7人制ラグビーへ出ることと相まって、東洋の騎士も一定の出番を得られそう。
加えて欧州では、キック主体の試合運びが目立つ。天候の不安定さやぶつかり合いが好まれる文化的背景もあり、接点の後ろからスクラムハーフが足を振り上げ、味方がその弾道を追う流れが多く見られる。
高速展開の得意な齋藤が現地のカルチャーに触れれば、プレーの幅を広げられるのではないか。本人は頷く。
「ワールドカップを経験し、9番(スクラムハーフ)からのキックが重要になっていると感じていて。あとは――最近、試合では蹴ってないですけど――プレースキックも自分の強み。フランスでは9番が積極的にプレースキックを蹴るイメージもあるので(取り組みたい)」
つまり今度の齋藤は、自らの思う「ワールドクラス」へ近づくための最善の環境を得たと言える。
海外に憧れ始めたのは早大3年時。日本代表候補の集うナショナル・デベロップメント・スコッドというプログラムでニュージーランドに渡り、南半球スーパーラグビーのクラブの予備軍と戦ったのがきっかけだ。
当時から勤勉さで鳴らした。休息時にポテトチップスを口にするにしても、過剰に油を使っていないお取り寄せ品に限っていた。自分の未来をよりよいものにするには、目の前の1日を充実させるべきだと知っていた。
特にここ数か月は、今回の目標を叶えるべく「先行投資」にも努めた。
今年5月までの国内シーズン中は、所属先の東京サントリーサンゴリアスで全体練習の合間に走り込みを挟むなどして強みの運動量に磨きをかけた。おもに、もっともハードな練習のある水曜には身体を苛め抜いた。
一つひとつの攻防でのエネルギー消費が激しくなる海外勢との戦いでも、最後までハイパフォーマンスを貫けるようになるのが狙いのひとつだった。
チャンスを探ると同時に、チャンスを活かすための準備を施してきた。
慎ましくとも堂々とした態度で海を渡る。
取材・文●向風見也(ラグビーライター)
【動画】世界へはばたく齋藤直人、リーグワンプレー集!