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格闘技・プロレス

19勝16KO無敗の最強王者、井上尚弥の「ベストバウト」はどの試合?識者が選ぶ名勝負3選

杉浦大介

2020.01.14

ドネアを判定で下したWBSS決勝は、長く語り継がれるであろう名勝負だった。(C)Getty Images

ドネアを判定で下したWBSS決勝は、長く語り継がれるであろう名勝負だった。(C)Getty Images

2019年11月
対ノニト・ドネア(WBA、IBF世界バンタム級タイトル戦)

 まだ記憶に新しいこの試合に関して、詳述する必要はないはずだ。新旧王者同士が演じたドラマチックな一戦は、技術レベルも最高級。その崇高な12ラウンズは忘れ難く、アメリカでもESPN.com、リングマガジン、ヤフースポーツといった主要媒体から”年間最高試合”として評価された。通称”Drama in Saitama”は、大袈裟でなく世界中を震撼させた名勝負だったのだ。

 中でも個人的には、やはりあの劇的な第9ラウンドが思い出深い。劣勢だったドネアは、この回途中に右を打ち込んで千載一遇のチャンスを掴む。井上は明らかにダメージを受けており、ここでドネアが詰めていれば急展開していた可能性はあった。

「それまでカウンターが有効だったから、好機でもカウンターを狙い続けてしまった」
 
 ドネアは強引に攻めなかった理由を後にそう説明し、悔やんだ。実際にドネアがなりふり構わず詰めていたら、モンスターはより深刻な危機に陥っていたのだろうか。それとも攻め急ぐドネアに、井上の強打が逆に致命的なカウンターとなって炸裂していたのだろうか。 

 その答えは永遠の謎としてバンタム級史上に刻まれるが、誇り高き4階級制覇王者に攻めさせなかったこと、自重を促したことこそが、井上の強さだったと考えることもできる。ともあれ、ここまで破竹の快進撃を続けてきた王者が初の試練を迎え、乗り越えたことで、この試合の価値はより大きなものになった。だとすれば、あの9回は井上のキャリアの中でも重要な意味を持つラウンドとして後に振り返られることにもなるのかもしれない。

【井上尚弥PHOTO】19勝16KO無敗の最強王者!世界が恐れる"モンスター"の厳選ギャラリー

取材・文●杉浦大介

【著者プロフィール】
すぎうら・だいすけ/ニューヨーク在住のスポーツライター。MLB、NBA、ボクシングを中心に取材・執筆活動を行う。ツイッターIDは@daisukesugiura。
 

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