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競馬

初挑戦から55年、またも跳ね返された凱旋門賞の高くぶ厚い壁。エルコンドルパサー、オルフェーヴルにあってシンエンペラーに足りなかった“アウェー克服スキル”

THE DIGEST編集部

2024.10.09

凱旋門賞を初めて制したブルーストッキング。ライアン騎手はガッツポーズを見せた。(C)Getty Images

凱旋門賞を初めて制したブルーストッキング。ライアン騎手はガッツポーズを見せた。(C)Getty Images

 レースは好スタートを切ったブルーストッキングが他の出方をうかがうところへロスアンゼルスが外から交わして先頭へ。ソジーがその後ろに位置し、シンエンペラーは中団馬群のなかを進む。アルリファーはややスタートで後手を踏んだこともあり、後方馬群の外から追走する形になった。

 フォルスストレートを経て各馬がラストスパートの体勢を整えながら迎えた直線。逃げたロスアンゼルスを交わしてブルーストッキングが先頭に立ち、追いすがろうとするソジーらを突き放して勝利を確定的にする。そこへ中団から7番人気のアヴァンチュールが脚を伸ばして2番手に上がるが、それをものともせずにブルーストッキングは1馬身1/4差を付けて先頭でゴール。2022年のアルピニスタ(Alpinista)以来、2年ぶりとなる牝馬の優勝を達成した。

 ブルーストッキングは当初、凱旋門賞への出走登録をしていなかったが、ヴェルメイユ賞の勝ち方の良さを見た陣営が追加登録料12万ユーロ(約1920万円)を支払って出走。見事にターゲットを貫いて見せた。

 余談だが、ブルーストッキングの馬券に関して日本では面白い動きがあった。発売が開始されて1時間後の6日8時頃にはオッズ9.5倍の4番人気だったが、最終的にはオッズ5.6倍の2番人気にまで売れたのである。先述の追加登録料を払っての参戦という情報が多くのファンに伝わったのがその要因だと思われるが、海外の馬券発売に慣れるにつれて、日本の競馬ファンの情報入手ならびに処理能力が著しく向上したことを示しているのではないだろうか。
 
 さて、レース結果に戻ると、3番枠から先行したブルーストッキングが1着、4番枠から馬群の中団を進んだアヴァンチュールが2着、10番枠から内に切れ込んで逃げたロスアンゼルスが3着、5番枠から先団で競馬をしたソジーが4着と、内からロスなくレースをした馬が上位を占めていることが分かる。その点で、11番枠から出たシンエンペラー、9番枠から後手を踏んで終始外を回らされたアルリファーには厳しいレースとなった。

 とはいえ、シンエンペラーの走りが凱旋門賞において上位と差のあるものであったのは確かだ。矢作調教師はレース後、グリーンチャンネルの取材に答えて、「馬の状態は良く、レース展開も悪くなく、馬場状態も想定の範囲内だったので、現状では敗因をつかみ切れていないというのが正直なところです」とコメント。前走のアイリッシュチャンピオンステークス(G1、レパーズタウン・芝2000m)で差のない3着に食い込んで評価を高めたが、降雨でタフなコンディションになったロンシャンの凱旋門賞は、また“別物”ということだ。

 それを考えると、「重」の凱旋門賞で2度(2012、13年)も2着に食い込んだオルフェーヴルの怪物的能力が、あらためて恐るべきものだったと感じさせられる。同じく「不良」の1999年にモンジューと死闘を繰り広げて2着となったエルコンドルパサー、2010年に「重」で2着となったナカヤマフェスタにも、その適応力の高さに感服させられた次第である。

 スピードシンボリの初挑戦(1969年)から55年、のべ35頭が挑戦してきた日本馬に、また11度目の参戦となった武豊騎手にも、また栄冠は訪れなかった。凱旋門賞が世界の競馬の頂点だとは言わない。しかし、乗りかかった舟ではないが、どこかでこの壁を乗り越えるべき大目標であることに変わりはあるまい。そのためには、敗れても敗れても挑戦を続けることでしか大望に達する術はない。

文●三好達彦

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