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競馬

史上稀にみる“超スロー”ペースでの決着。日本の総大将ドウデュースが異次元の末脚を炸裂【ジャパンカップ】

三好達彦

2024.11.26

 そして1000mの通過ラップは、なんと1分02秒2という超スロー。本レースの直近10年でもっとも遅いペースになった。そのため馬群の10馬身程度の長さに収まり、後方に位置したドウデュースでも先頭からそれほどの差がなく、まさに一団の呼び名が相応しい流れになった。

 こうした超スローペースを察して、ウィリアム・ビュイック騎乗のドゥレッツァが中団からぐいぐいと位置を押し上げて先頭を奪う。すると第3コーナー過ぎから、ドウデュースが馬群の外を通って馬なりでまくって進出。最終コーナーを回るときには7番手までポジションを上げていた。

 府中の長い直線。先頭のドゥレッツァが後続を突き放しにかかり、インからシンエンペラーが追いすがるが、坂下から桁違いの末脚を繰り出したのはドウデュース。馬体を併せてきたチェルヴィニアを競り落とし、ドゥレッツァとの叩き合いに持ち込み、それも制して半馬身ほど前に出る。ドゥレッツァは粘り、シンエンペラーは二の脚を使って追いすがる。3頭が一段となってゴールへ飛び込んだが、ドウデュースは最後まで先頭を譲らず、堂々と栄冠に輝いた。粘りに粘ったシンエンペラーとドゥレッツァはクビ差で2着同着となった。
 
 1000m通過が1分02秒2、決勝タイムが2分25秒5というと、これはスーパーGⅠと呼ばれるジャパンカップとして、著しく凡庸な時計。ちなみに、前日に行なわれた同距離の3歳以上1勝クラスでの走破時計は2分24秒7と、本レースより0秒8も速い。日曜は本馬場に相当な量の散水があり、外ラチ沿いで撮影するカメラマンから「朝一番はパンツの膝から下が、ぐっしょり濡れるほどだった」と聞いているが、それにしてもGⅠに相応しくないほどの超スローであった誹りは免れまい。

 結局、前へ行った2頭を、早めに動いたドウデュースが差し切ったというのがこのレースの図式となったのだが、上位3頭がレースの流れを読み切って自身が乗る馬のストロングポイントを生かし切ったわけで、3騎手の好騎乗は称えられるべきだろう。

 なかでも、やはり驚かされたのはドウデュースの武豊騎手の騎乗ぶりだ。向正面、第3コーナーまでは手綱を引いてギリギリで折り合いを付けながら進み、コーナーを曲がりながら手綱を緩めて馬なりで上昇。そして、超スローで前残りの競馬になっていることを察してだろう、通常なら早仕掛けと言われるタイミングで仕掛けて直線坂上で先頭に立つと、追いすがる2頭を退けて戴冠を果たした。

 鞍上の意のままに動き、走り切ったドウデュースの能力の高さ(今回も上がり3ハロン32秒7は断トツの1位)はもちろんだが、いくつもの局面で最適な判断を降しながらゴールまで相棒をエスコートしたヘッドワークとテクニックは、「リヴィング・レジェンド」の呼び名に相応しいものだった。
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