――今後、井上選手のさらなる快進撃を阻む要素があるとすれば？

MS : 注目すべきは、階級を上げていったときに身体がどう反応するかでしょうね。骨格的な話をすれば、井上は大柄な選手ではありません。もともとライトフライ級で戦っていたくらいですからね。スーパーバンタム級、フェザー級に上げたとき、彼のボディがどう適応していくか。パワーの効果を保ち、パンチを当てた時にこれまで通りに相手を効かせられるのか。逆にパンチをもらったときにどう反応するのかが見どころになると思います。

――さらに階級を上げた場合、パンチの効果が未知数であることは、前の試合での対戦相手だったノニト・ドネア（フィリピン）も指摘していました。

MS :　井上ほどの選手なら、それぞれの階級で何試合かこなすうちに、徐々にアジャストを進めていくのでしょう。まずは階級を上げた当初の動き、戦いぶりが興味深いものになると思います。
  ――階級を上げても強さを保ち続けた選手といえば、何と言ってもパッキャオが真っ先に頭に浮かびます。ワイルドカードジムでトレーナーをしていたあなたはパッキャオのことももちろん熟知していますが、井上選手とパッキャオに何らかの共通点はあると思いますか？

MS : それほど多くの共通点があるとは思いません。パッキャオはとてもユニークなスタイルを築き上げた選手。井上も自身の魅力的なボクシングを確立させた選手で、２人のそれは別物です。あえて似ている部分を挙げるとすれば、２人ともエキサイティングで、ファンを喜ばせるスタイルを持ち、偉大なボクサーであるということです。その点では確かに似ていて、だからこそ彼らは多くのファンの支持を得られているのでしょう。

取材・文●杉浦大介

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【著者プロフィール】
すぎうら・だいすけ／ニューヨーク在住のスポーツライター。MLB、NBA、ボクシングを中心に取材・執筆活動を行う。ツイッターIDは@daisukesugiura。