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格闘技・プロレス

19勝16KO無敗の最強王者、井上尚弥の「ベストバウト」はどの試合?識者が選ぶ名勝負3選

杉浦大介

2020.01.14

4戦目にして初タイトルを獲得した田口戦は、ベストバウトのひとつだ。写真:日刊スポーツ/朝日新聞社

4戦目にして初タイトルを獲得した田口戦は、ベストバウトのひとつだ。写真:日刊スポーツ/朝日新聞社

 19勝16KO無敗の日本が誇るモンスター。井上尚弥は数々の衝撃的な勝利を重ねてきたが、ベストバウトと言えるのはどの試合なのか。世界のボクシングに精通するニューヨーク在住のスポーツライター杉浦大介氏に、幾多の名勝負のなかから3つを選んでもらった。

    ◆    ◆    ◆

2013年8月
対田口良一(日本ライトフライ級タイトル戦)

 無冠時代の井上の戦歴の中で、真っ先に思い出されるのが田口との打撃戦である。井上が3-0の判定勝ちで4戦目にして初戴冠するのだが、王者ながら戦前は絶対不利と予想された田口も持ち前の手数と闘志で大健闘。中には97-94と採点したジャッジもいたほどの好ファイトだった。後述するノニト・ドネア戦を除けば、井上が最も苦戦した試合の1つといってよかったのではないか。

 その後、世界王者となった田口にこの試合について尋ねてみたことがある。飾らない好漢、田口のこんなコメントが実に印象深い。

「世界挑戦のときも、相手は井上くんより強いはずはないから大丈夫だろうと思えました。(評価の高かった)メリンド戦でも、メリンドは井上くんほどじゃないだろうと考えました。そんな考えはいつもありますし、それは大きいです。負けはしましたけど、やはりやって良かったなと思います」

 田口は己の力で尊敬に値するキャリアを築いた選手であり、”井上と戦った経験があったから世界王者になれた”などと述べるつもりはない。ただ、鋼のようなモンスターの拳が、田口のボクサー人生に大きな影響を与えたことは間違いないのだろう。そんなエピソードもエッセンスとなり、後の世界王者同士が凌ぎを削ったこの一戦はより輝いて見えてくるのである。
 
2014年12月
対オマール・ナルバエス(WBO世界スーパーフライ級タイトル戦)

「君の国からも凄い選手が現れたね」。2015年の年明け、ニューヨークで催されたボクシング興行の際、現地の多くのメディアからそう声をかけられたのが懐かしく思い出される。

 ナルバエスは2011年のドネア戦でも判定まで粘っており、アメリカでも一定の知名度があった。そんなアルゼンチンの強豪を、井上が4度のダウンを奪って粉砕した一戦のインパクトは莫大。当時は現在流行のストリーミング配信がまだ一般的ではなく、海外の試合観戦はYou Tubeが主流だったが、それでも井上対ナルバエス戦の衝撃的な映像は瞬く間に師走のアメリカをも駆け巡った。

 いわゆる名勝負ではなくとも、アメリカの多くのファンがモンスターの存在を初めて認識したという意味で印象深い一戦。この時点で、井上はおそらくすでにパウンド・フォー・パウンド上位の力量を擁していたのだろう。だとすれば、もっと早い時期に話題沸騰してもよかった。拳のケガ、マッチメイクの難しさなどが影響したのだろうが、その能力を考えれば、現在の井上のブレイクスルーは少々遅すぎたようにも思えてくるのだ。
 

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