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競馬

エンブロイダリーの戴冠にみるアドマイヤマーズ産駒の血脈の奥深さ。モレイラ騎手は潜在能力を絶賛「3歳の新しいスターだ」【桜花賞】

THE DIGEST編集部

2025.04.15

 エンブロイダリーの父であるアドマイヤマーズは、現役時代に朝日杯フューチュリティステークス、NHKマイルカップ、香港マイルと、国内外のマイルGⅠを3勝した名馬。エンブロイダリーはその初年度産駒で、いきなりクラシックホースを出して幸先のいいスタートを切った。スピードとパワーを兼備するのは祖父ダイワメジャー以来受け継がれたもので、今回はそうした特質が見事に生かされての勝利だった。距離延長に対する適性は未知数なだけに、エンブロイダリーの今後の走りが注目される。なお、今後の進路については「オーナーとの相談」だとのことである。

 昨年に続いて桜花賞2連覇を達成したジョアン・モレイラ騎手は「すばらしい牝馬です。馬場状態は課題だと思いましたが、ここまでの状態になると、実際に走ってみないとわかりませんでしたが、いいフットワークを見せ、馬場もこなして、最後の末脚も見せてくれました。3歳の新しいスターだと思います」とエンブロイダリーを絶賛。第3コーナーで内斜行して他馬を押圧したことはいただけないが(過怠金5万円の処分)、馬群を捌きながら抜け出してくるときのアクロバティックと言えるほどの騎乗技術は、やはり「マジックマン」と称される異名はいくら賞賛しても、し足りないほどである。

 また、これがGⅠ初参戦にして初制覇という偉業を成し遂げた森一誠調教師は、今年が開業2年目というフレッシュなトレーナーであり、ノーザンファーム勤務を経てJRA競馬学校厩務員過程を卒業。2004年から堀宣行厩舎(美浦)で厩務員、調教厩務員、調教助手を務め、2023年に調教師免許を取得した。

 技術調教師の期間は国枝栄厩舎(美浦)で研修し、昨年3月に厩舎を開業すると初年度から15勝を挙げるとともに重賞勝利を収め(GⅢカペラステークス=ガビーズシスター)、関係者から熱い注目を集めていた。ちなみに、ここまでの重賞成績は5戦3勝という驚異的な勝率で、今週開催される皐月賞(GⅠ、中山・芝2000m)にも、弥生賞(GⅡ、中山・芝2000m)で2着したヴィンセンシオを出走させる予定だ。
 
 2着のアルマヴェローチェは道中の折り合い、抜け出す末脚の力強さ、岩田望来騎手の手綱さばきがすべて万全で、負けてなお強しの競馬。敗れたのはわずかな勝負の綾というものだろう。次走はオークス(GⅠ、東京・芝2400m)の予定とのことだが、父ハービンジャーという血統を見ると、距離延長への不安は少ないだろう。

 最後方から外をまくって追い込んだリンクスティップがアルマヴェローチェから2馬身半差の3着となり、距離ロスを抑えて最内から伸びてきたマピュースが同じく2馬身半差の4着。前の2頭とははっきりとした着差が付いているだけに惜しいという感覚はないが、前者は父がキタサンブラックであるぶん、2000m戦を2度経験していることで、オークスへ行けば距離延長で自身のアドバンテージを生かせるのではないかと見る。

 5着に敗れたエリカエクスプレスは、御するのがとても難しい馬というインプレッションを受けた。スピード能力が傑出しているのは間違いないのだが、それをコントロールできるところまでメンタルが成長していないためか、前進気勢が強いままに速いラップを刻み、直線で失速してしまった。4コーナーで物見をしたようだが、それも精神的な幼さを持つがゆえだと思われる。今回のみで見限ることなく、長い目で見守りたい1頭だ。

 全体的に見ると、『稍重』馬場にもかかわらず1分33秒1という極端に遅いとは言えない走破タイムが出たように、道悪がどの程度勝敗を左右したのかは見極めにくい一戦となった。結果を見ても、ステップレースのなかでもレベルが高いと言われたクイーンカップを制したエンブロイダリー、2歳女王のアルマヴェローチェ、稍重のきさらぎ賞(GⅢ、阪神・芝1800m)で牡馬に交じって2着したリンクスティップと、メンタルで負の側面が出たエリカエクスプレス以外は、評価が高かった馬がそのまま上位争いをした印象が強い今年の桜花賞だった。

文●三好達彦

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