レース後半の流れを追うとこうなる。勝ったミュージアムマイルも②の事象で左右の馬に馬体をぶつけられてバランスを崩しそうになるシーンもあったが、それを慌てずに落ち着かせたジョアン・モレイラ騎手の巧みな手綱さばきもあって、見事な逆転劇を演じて見せた。これまでは好位差しを常としていたが、今回は過去随一の切れ味を繰り出してビッグレースを制したのだから、それを賞賛する以外にない。
ミュージアムマイルの父リオンディーズ(父キングカメハメハ、母シーザリオ、母の父スペシャルウィーク)は、昨年の天皇賞(春)(GⅠ)を制したテーオーロイヤルに続き、2頭目のGⅠホースを送り出した。産駒は距離、馬場をいとわない豊かなバリエーションに富んでおり、母の父ハーツクライが中長距離適性を補強している。モレイラ騎手が「距離が2200m、2400mに延びてもまったく問題ない」と述べているように、日本ダービー(GⅠ)での距離延長に不安はないと感じられる。高ポテンシャル馬がベールを脱いだ、という強い印象が残る。
クロワデュノールの陣営には、極めて不条理な結果となった。彼が受けた不利は前述した通りで、北村友一騎手は「他馬にまくって来られたときに外から押し込められるところがあり、引っ張らざるを得ない状況になりました。そこは非常にもったいなかったです」とし、斉藤崇史調教師も「ぶつけられたのが痛かった。それがなければ勝っていた」と語っている。単勝オッズ1倍台の大本命馬を流れに乗せて前々でレースを進めるのは当為だろうし、また不利を受けたあと手綱をしごいて馬を鼓舞した北村騎手の騎乗を責めることはできないと筆者は考える。
それでも、結果として先行した馬が残りづらく、中団より後方から進んだ差し・追い込みが台頭した厳しい流れのなか、唯一1頭、前付けで2着を死守した能力の高さが再確認できたのは、クロワデュノール陣営には慰めにならないだろうが、ささやかな収穫と言えるのではないか。大目標に向けての立て直しをあらためて期待したい。
ダービー戦線は今後、ミュージアムマイルとクロワデュノールの2頭を中心に進んでいくことだろうが、道中で不利を受けた馬たちが軒並み上位を占めた結果を見ると、トラブルが多く起こったここでは3着以下の能力を推察するのは難しい。つまり、ある程度スムーズな競馬であれば、また違った結果は違ったものになったであろうということだ。
そのうえで言えば、3着のマスカレードボール、4着のジョバンニ(牡3歳/栗東・杉山晴紀厩舎)、5着のサトノシャイニング(牡3歳/栗東・杉山晴紀厩舎)に加え、上がり最速(33秒8)で13番手から目覚ましい脚を使った6着のマジックサンズ(牡3歳/栗東・須貝尚介厩舎)までをマークして、今後の動向を見守りたい。
文●三好達彦
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ミュージアムマイルの父リオンディーズ(父キングカメハメハ、母シーザリオ、母の父スペシャルウィーク)は、昨年の天皇賞(春)(GⅠ)を制したテーオーロイヤルに続き、2頭目のGⅠホースを送り出した。産駒は距離、馬場をいとわない豊かなバリエーションに富んでおり、母の父ハーツクライが中長距離適性を補強している。モレイラ騎手が「距離が2200m、2400mに延びてもまったく問題ない」と述べているように、日本ダービー(GⅠ)での距離延長に不安はないと感じられる。高ポテンシャル馬がベールを脱いだ、という強い印象が残る。
クロワデュノールの陣営には、極めて不条理な結果となった。彼が受けた不利は前述した通りで、北村友一騎手は「他馬にまくって来られたときに外から押し込められるところがあり、引っ張らざるを得ない状況になりました。そこは非常にもったいなかったです」とし、斉藤崇史調教師も「ぶつけられたのが痛かった。それがなければ勝っていた」と語っている。単勝オッズ1倍台の大本命馬を流れに乗せて前々でレースを進めるのは当為だろうし、また不利を受けたあと手綱をしごいて馬を鼓舞した北村騎手の騎乗を責めることはできないと筆者は考える。
それでも、結果として先行した馬が残りづらく、中団より後方から進んだ差し・追い込みが台頭した厳しい流れのなか、唯一1頭、前付けで2着を死守した能力の高さが再確認できたのは、クロワデュノール陣営には慰めにならないだろうが、ささやかな収穫と言えるのではないか。大目標に向けての立て直しをあらためて期待したい。
ダービー戦線は今後、ミュージアムマイルとクロワデュノールの2頭を中心に進んでいくことだろうが、道中で不利を受けた馬たちが軒並み上位を占めた結果を見ると、トラブルが多く起こったここでは3着以下の能力を推察するのは難しい。つまり、ある程度スムーズな競馬であれば、また違った結果は違ったものになったであろうということだ。
そのうえで言えば、3着のマスカレードボール、4着のジョバンニ(牡3歳/栗東・杉山晴紀厩舎)、5着のサトノシャイニング(牡3歳/栗東・杉山晴紀厩舎)に加え、上がり最速(33秒8)で13番手から目覚ましい脚を使った6着のマジックサンズ(牡3歳/栗東・須貝尚介厩舎)までをマークして、今後の動向を見守りたい。
文●三好達彦
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