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競馬

【名馬列伝】ぶっつけGⅠ参戦の常識を打ち破った“奇跡の馬”サクラスターオー。稀有な壮挙を成し遂げた蹄跡

三好達彦

2025.06.28

 まだ1勝馬ながらクラシックへの参戦を目指すサクラスターオーは、次走3着までに皐月賞(GⅠ、中山・芝2000m)への優先出走権が与えられる弥生賞(GⅡ、中山・芝2000m)に挑戦。鞍上を東信二にスイッチして出走すると、彼はそのポテンシャルを一気に解き放つ。中団からレースを進めて徐々に位置を押し上げて直線へ向くと、逃げるビュウーコウ、2番手のマイネルダビテを僅かに差し切って優勝。一躍、競馬シーンで注目される存在となった。

 サクラスターオーは脚元の具合と相談しながら本格的なトレーニングに移行し、GⅠ仕様の体に仕上げられた。そして迎えた”一冠目”の皐月賞。寒梅賞のあとにスプリングステークス(GⅡ、中山・芝1800m)で胸のすくような追い込み勝ちを見せたマティリアルがオッズ2.0倍の1番人気に推され、サクラスターオーは5.6倍の2番人気となってレースを迎えた。

 レースの前半、サクラスターオーとマティリアルは後方14番手付近を進んだが、3コーナーの手前から位置を押し上げていったサクラスターオーに対して、マティリアルは手応えが優れない。そして直線へ向くと、9番手まで上がっていたサクラスターオーは破壊力抜群の末脚を繰り出して一気に前方の馬たちをのみ込み、遅れて追い込んできたゴールドシチーとマティリアルをらくらくと抑えて圧勝。三冠制覇に向けて最高のスタートを切った...はずだった。
 
 しかし皐月賞から約1か月後、日本ダービー(GⅠ)に向けての調教中、前肢に繋靱帯炎を発症していたことが分かり、獣医の診断によると全治4か月という重症。この段階でダービーへの夢は事実上、絶たれてしまった。

 この故障にショックを受けた調教師の平井だったが、気持ちを切り替え、どうにか菊花賞(GⅠ、京都・芝3000m)には出してあげたいという望みに夢を託すことにした。

 まずは患部を癒すため、自ら山梨県にある下部温泉の源泉を汲み上げて美浦トレセンまで運んでは、サクラスターオーの脚を浸してマッサージを施して回復を促した。6月になると福島県いわき市の俗称『馬の温泉』(JRA競走馬総合研究所常磐支所)に滞在させ、温泉水で脚元を癒しつつ、脚に負担がかかりにくいプール調教を取り入れてトレーニングに励ませた。本質的に体力があるサクラスターオーはトレーニングにへこたれることはなかったという。

 とはいえ、サクラスターオーの脚元の状態は菊花賞へ進むか、取り止めるか、という危ういバランスのうえ、薄氷を踏むような状態での調整を強いられた。11月1日には栗東トレーニング・センターへ移動して調教を進めるなか、平井はオーナーの全に出走の許可を取り付けたものの、出否の判断はレース直前まで繰り延べていた。そして獣医の診断は「レースで出せるギリギリの状態」だと許可を受けながら、脚の腫れと戦いながらいよいよ当日を迎える。
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