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食と体調管理

「走りに正解はない」陸上短距離走・飯塚翔太の飽くなき向上心と日々を支える食習慣

酒井政人

2025.08.01

写真:Agence SHOT

写真:Agence SHOT

──中央大学へ進学後も活躍を続け、3年時(12年)の日本選手権(100m4位、200m2位)によってロンドン五輪代表に選出されました。そのときのお気持ちを教えてください。 

 監督からの電話で知りました。寮にいたときに「決まったよ」と言われて、その場でガッツポーズをして、「おっしゃー!」と叫びました。とにかく、うれしい気持ちで一杯でしたね。大学1年時の世界ジュニア選手権200mで金メダルを獲得して、「オリンピックに出られるかも」と思っていて、2年後に実現したかたちです。憧れの舞台にチャレンジできるというワクワクした気持ちでした。

──大学での日々がオリンピック出場につながったと思いますが、中央大学はどのような環境でしたか? 

 実家を出て、寮に入ったので生活自体がガラッと変わりました。練習も高校時代とまったく違います。土日は集合練習があるんですけど、平日は集合がなく、授業の合間に3~4人で練習するようなかたちでした。

 中央大学への進学を決めた理由のなかに自分で練習を決められるという点がありました。1年時は高校時代からのメニューを続けて、3年時ぐらいから自分で考えるようになりました。考えながら徐々に変えていけたのが、良かったのかなと思っています。

──そして念願のロンドン五輪では200mと4×100mリレーに出場されました。初めてのオリンピックはいかがでしたか?

 個人の200mは何もできなかったという印象です。狙っていたタイムで走れず、20秒81の5着で予選落ちしました。当時の強化委員長だった高野進さんから「1回目はこんなもんだよ」と言われたのをよく覚えています。ウォーミングアップ場の有名選手を観客みたいな気持ちで眺めてしまい、勝負する気持ちを出せなかったのが良くなかったと思います。

 その後に4×100mリレーがあったんですけど、予選は通過ギリギリラインでアンカーの僕にバトンがまわってきました。抜かれたら落ちるという状況で、頭が真っ白になって、ほとんど記憶なくゴールまで走ったんです。その時のパフォーマンスが凄く良くて、無心で必死に走るのが大事だと気づかされました。
 
──そこから国際経験を重ねて迎えたリオ五輪は4×100mリレーで銀メダルを獲得されました。予選からアジア記録を更新する走りで、メダルの期待感も大きかったかと思いますが、決勝はどのような気持ちで迎えたのでしょうか? 

 リレーのメンバー候補が5人いて、全員が自己ベストもしくはそれに近い記録を出していて、今までにない状態だったんです。年齢が近くて仲も良く、バトン練習は意見を出し合って技術を向上させてきました。予選でアジア記録を出したことで決勝前のウォーミングアップでは強豪国の選手たちからの視線を感じて、さらにスイッチが入ったんです。

 決勝では2走の僕がバトンを受けたときに、中指と薬指の間にバトンが入るミスがありました。でも山縣亮太君と息を合わせて、どうにか受け取ると、3走・桐生祥秀君が追い上げて、アンカーのケンブリッジ飛鳥君にバトンが渡ったときはトップだったんです。あの瞬間は過去一番の興奮でした。チームが2位か3位でゴールしたのが分かったので、モニターに「2位」と表示されたときの高揚感凄かったですね。半分「夢」で半分「現実」みたいな感じでした。ただ2走はゴールまで一番遠いので、喜びを分かち合うタイミングが遅れて、ちょっと盛り下がったときに合流したのを後悔しています(笑)。

──2021年に開催された東京五輪は右膝の状態に不安があったなかでも200m代表を決めました。日本での開催、コロナ禍による延期などこれまでの大会と異なる面もあったと思いますが、どう振り返りますか?

 独特な思い出ですね。選手は試合に全力で向かうことしかできませんが、僕は膝のケガも重なり、これまでの世界大会のなかで一番遅いタイム(21秒02)になり予選落ちしました。無観客での大会となり、スパイクのピンがトラックに刺さるザク、ザクという音が印象に残っています。良い思い出もあって、選手村の評価が海外選手から高く、日本人のおもてなしの気持ちが伝わったのがうれしかったですね。

──昨年行なわれたパリ五輪でも200mに出場して、4大会連続のオリンピック出場を果たしました。活躍を続けるために変化した部分や新しく取り入れたことがあれば教えてください。

 常に試行錯誤を続けています。「走り」には正解がありません。自己ベストが出ても、翌年はその走りが通用しなくなることがあるんです。そのため自分の走りは毎年変わっていますし、練習内容も変えています。それがここまで向上できた要因だと思います。

 試行錯誤して「引き出し」の数を増やしておくことで、不調からの脱出も早くなります。あとは常に闘争心を燃やし続けることです。5月の静岡国際で鵜澤飛羽君が日本記録に近いパフォーマンスをしました。若い世代の成長を感じてうれしさもあるんですけど、めちゃ悔しかったですね。僕の同年代はほとんど引退していて、彼らの分も自分が頑張りたいなと勝手に思っています。
 

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