専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
ラグビー

完敗した南アフリカ戦の「想定内」と「想定外」。悲願のW杯8強に向け、主将リーチは「何をやるべきかが分かった」

吉田治良

2019.09.07

松島のトライで一矢を報いたが、後が続かなかった。写真:茂木あきら(THE DIGEST写真部)

松島のトライで一矢を報いたが、後が続かなかった。写真:茂木あきら(THE DIGEST写真部)

「ディテールが落ちた時にやられた」とは、リーチ・マイケル主将の言葉だが、この日、最後まで出足と集中力が鈍らなかった南アフリカのような相手に、細かなミスを連発していては、勝機など見出せないだろう。

 73分には田村のパスをインターセプトされて、終了間際の80分にはこれが初キャップとなったHO(フッカー)北出卓也の落球をきっかけに、いずれも独走トライを許し、結局7―41の大差で敗れている。

 こうして、ディフェンス力とキッキングゲームの質の差で南アフリカに屈した日本だが、「上手く機能していた」とジョセフHCが振り返るように、スクラムで大きな相手に圧倒されなかったのは、ひとつの収穫だろう。

 一方で心配なのは、フィジー、トンガ、アメリカに3連勝し、今夏のパシフィックネーションズカップを制した自信を、この敗戦で失ってしまうことだ。2週間後に迫ったRWC本番で対戦するアイルランドやスコットランドも、おそらくハイパントによる空中戦を仕掛けてくるに違いない。
「自信は少し下がると思う。それを2週間でどう取り戻すかが大事」

 リーチの言葉に偽りはないだろう。しかし続けて、頼もしいキャプテンはこうも語っている。

「負けたけど、本番前に強いチームと試合をして、何をやるべきかが分かった。ティア1の圧力、強さを改めて知ることができたのは、直前の準備としてすごく良かったと思う。このチームの修正能力はとても高いし、修正のための時間はまだ十分にある」

 10回やって一度、あるいは100回やって一度勝てるかどうかの相手に勝ったからこそ、4年前の勝利は「ラグビー史上に残る世紀のジャイアントキリング」と呼ばれたのだ。今回、南アフリカに完敗を喫したことで、そうした奇跡が簡単に起こるものではないのだと、良い意味で割り切ることも必要だろう。

 日本代表が自国開催の今大会で目指すのは、決して一度きりの大番狂わせを起こすことではない。4年前、プール戦で3勝を挙げても勝ち上がれなかったベスト8に、どんな形であっても辿り着くことなのだ。

 そうしてまた、今度は決勝トーナメントで、南アフリカやニュージーランドを相手に、世界を驚嘆させるジャイアントキリングを演じてくれたら──。それは日本中の人たちの心を激しく震わす、極上の勝利に違いない。

取材・文●吉田治良(スポーツライター)

【名鑑】「ラグビーW杯2019」 日本代表メンバー「ヘッドコーチ、フォワード編」

【名鑑】「ラグビーW杯2019」 日本代表メンバー「バックス編」
NEXT
PAGE

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号