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「やります、あと半年で」世界との差を縮めるために、女子ホッケー永井友理が取り組むチームの進化

内田暁

2021.01.23

 永井が、9月末開幕の日本リーグまでにチーム完成は間に合わないかもと感じたのは、7月に行なった、コカ・コーラレッドスパークスとの練習試合の時だった。コカ・コーラは、永井にチーム変革を決意させるほどの、急成長を見せたライバル。その好敵手との対戦で、練習では見えなかったほころびや穴を突きつけられることになる。

「やっていることは間違ってないけれど、まだチームに浸透しきってない、完成してないと感じました。正解だと思っていたことも、試合をすると課題が見えてくる。ミスした時にどう対処するかというシミュレーションや、準備もできていなかったんです」

 それらの課題に気づけたのは、チームにプラスだったはずだ。ただ永井が悔いたのは、自分が覚えた不安や焦りを、チームに伝播させてしまったことだ。

「キャプテンだったのに、不安そうな顔や行き詰まっているところをチームに見せてしまった。そういうのは伝わるので。戦術を変えようと言い出したのも私だし、もっと自分のことも、チームメイトも信じるべきでした」。
 
 ホッケーの国内大会には、日本リーグ、全日本選手権、そして全日本社会人選手権の3大大会がある。そのうち、最初にタイトル戦が行なわれた社会人選手権の決勝戦でコカ・コーラに敗れた時、永井は、チーム全体から自信が失せていくのを感じた。

 その後は日本リーグ、そして全日本でもコカ・コーラの後塵を拝し、ソニーは無冠に終わる。それは永井の長いキャリアにおいて「こんなに負けた経験はない。一生忘れられない」2か月半となった。
 
 年が明けると早々に、日本ホッケー界では代表選考会が行なわれた。昨年10月、日本代表監督を3年務めたオーストラリア人監督が突然辞任し、急きょスペイン人のチャビ・アルナウ氏が就任した。全ては白紙からのスタートとなり、永井といえど、代表に選ばれる保証はない。

 だからこそ彼女は、「100%の準備をして挑む」と言った。

「もう後悔はしたくない。いろんなことを後悔したくないと、改めて思わされました。同じ時間は戻ってこない。同じメンバーで戦えるのもその時だけだから」

 高校選抜大会の補助員として働きながら、どれだけ多くの人の想いと努力の上に大会が成り立っているかを、彼女は改めて知った。だからこそ簡単には、「敗戦を糧にして、次がんばりますとは言えないんです」と永井は述懐する。

 周囲から「悩み過ぎ」と言われるまでに悩み抜き、過去に心を捕らわれながら、それでも次を見るしかない矛盾を抱えて、彼女は先へと進む。

 目指すホッケーは、まだ完成の日を見ていない。代表戦が増えていけば、チームで過ごす時間は少なくなるが、彼女は自分に誓うように明言した。

「時間は少ないけど、それでも完成させないといけない。やります、あと半年で」

取材・文●内田暁

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