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プロ野球

1軍スタートのロッテ佐々木朗希。初日から「練習メニュー変更」のワケ

岩国誠

2020.02.02

吉井コーチの指導の下、佐々木朗がプロとしての一歩を踏み出した。写真:金子拓弥(THE DIGEST写真部)

吉井コーチの指導の下、佐々木朗がプロとしての一歩を踏み出した。写真:金子拓弥(THE DIGEST写真部)

 1軍スタートとなったロッテ・佐々木朗希投手が1日、沖縄・石垣市中央運動公園野球場でキャンプイン。真新しいピンストライプのユニフォームに袖を通した背番号「17」がチームの先輩たちとともに初日のメニューをしっかりこなした。

 キャンプ初日、晴天に恵まれた石垣島。前日までの合同自主トレとは違い、この日から全選手がユニフォームを着用。各選手、引き締まった表情で球場入りする中、緊張の面持ちを見せる黄金ルーキーの姿があった。

 当初は投内連携を終えた後、ランニングを行う予定だったが「そのランニングメニューが、結構きつい内容なので」と急遽、吉井理人1軍投手コーチが練習メニューを変更。佐々木朗と同じく高卒ルーキーのサイドスロー・横山陸人投手へ、ゴロ捕球からのネットスローと時間を区切ってのキャッチボールを課した。
 
 一見すると何てことの無いように見える練習だったが、これには明確な意図があった。

「(ゴロ捕球は)投球時にステップをする左足を前にする形で捕球してもらいました。それは、ステップする方の股関節に(足が)しっかりはまるイメージを作ってもらい、それからキャッチボールに入ってもらったという感じです」

 吉井コーチはそう説明する。
 右投げの佐々木朗が、投球時に踏み出すのは左足。つまり、左足の股関節部分がしっかりはまる意識を作るということ。さらに続ける。

「アマチュアで投げてきた子たちは、おそらく柔らかいマウンドで投げていたと思うんです。プロに来ると硬いマウンドになるので、しっかり股関節にはめないと故障もあるし、フォームのバランスも崩してしまう。そこを考えてああいうドリルを入れました」

 佐々木朗自身も初めて教わったという、この動きを踏まえてからのキャッチボール。時間を区切り、約40メートルという距離で行ったものだが、これにも吉井コーチの計算があった。

「時間を区切ったのは、その方が(球数を数えるより)やめやすいので。40mの距離は、球速が上がったり、球質が良くなったりと好影響を与えるちょうどいい距離だと、これまで自分の経験からです」

 この日は2000人のファンと110人の報道陣が詰めかけた。「佐々木フィーバー」と言っていい周囲の注目は「いつブルペンで投げるか」だろう。

 しかし、吉井コーチはその前にやるべきことを明確に提示している。

「高校の時の体と成長している今の体で、投げている時のギャップがあると思うんです。それの感覚を埋めてもらってからピッチングに入ってもらえたらと思っています。どの選手もそうですが冬の間、投げる練習がシーズン中より少なく、体力強化中心のメニューの中で状態の良さを感じている時に、故障してしまったり、フォームのバランスを崩して調子を落としてしまうことが、特に若い選手には多いんです。それが彼らにとって1番もったいないことなので、そこを補うのが僕らの仕事かなと考えています」

 今回は股関節を意識させるドリルだったが、今後も下半身を中心に、各部位の使い方を意識させながら、自分のベストの投球感覺を呼び起こさせるよう、じっくり誘導していきたいと吉井コーチは考えている。

「とてもいい練習ができました。新人合同自主トレとは違った雰囲気の中、いつもと違う緊張感がありました」

 初日の練習を終えた佐々木朗は充実した表情を浮かべ振り返った。
 球界の至宝は名伯楽の元で、じっくりその才能を熟成させていく。

取材・文●岩国誠(フリーライター)

【ロッテ 佐々木朗希PHOTO】集まる視線に緊張気味?期待のルーキーがキャンプイン!

【著者プロフィール】
いわくに・まこと/1973年生まれ。プロ野球のニュース番組制作に携わるTV映像ディレクター。一時は球団公式SNS用動画制作やパ・リーグTVでの制作・配信を担当。その縁からフリーライターとして、webメディアでのプロ野球記事の執筆を始める。また、舞台俳優としての経験を生かして、野球イベントなどの運営や進行役など、幅広い活動を行っている。

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