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MLB

サイン盗みにタンキング…“球界で最も嫌われている球団”アストロズがもたらした「功罪」

出野哲也

2020.01.30

17年にワールドシリーズを制覇し、球団史上初の世界一を達成したアストロズ。(C)Getty Images

17年にワールドシリーズを制覇し、球団史上初の世界一を達成したアストロズ。(C)Getty Images

 2010年代を最も象徴するチームがアストロズであることに異論を挟む者はいないだろう。他のどのチームよりも時代の先を行き、球界のトレンドセッターとなった一方で、行き過ぎた勝利至上主義で球界内に多くのアンチを生んだ。アストロズの「光」と「影」を改めて検証してみようではないか。

   ◆   ◆   ◆

 2019年のワールドシリーズは、ヒューストン・アストロズよりワシントン・ナショナルズを応援していたファンが多かったのではないか。すでに17年に世界一になっているアストロズよりも、初のシリーズ出場であるナショナルズの方が、判官贔屓という意味でも声援を集める要素はあった。

 だが、理由はそれだけではない。アストロズは今や、球界で最も嫌われている球団だからである。10年代後半に最も大きな成功を収めたチームが、なぜここまでアンチを増やしたのか。アストロズがもたらした功罪を振り返りたい。

■「道義」を軽視する土壌がサイン盗みにつながった?

 まずは「罪」からだ。18年、アストロズはブルージェイズのロベルト・オスーナをトレードで獲得し、批判に晒された。オスーナは家庭内暴力によって75試合の出場停止中だったからだ。また昨年は、ワールドシリーズ進出を決めた直後にアシスタントGMのブランドン・トーブマンが、女性リポーターの面前で「オスーナを取っておいてホントよかったぜ」と挑発。球団は当初トーブマンを擁護していたが、轟々たる非難を受けて解雇した。迅速に謝罪せず、開き直ったがためにかえって傷口を広げてしまったのだ。
 
 オスーナの一件でも明らかな、アストロズの「勝つためなら手段を厭わない」姿勢は以前から白眼視されていた。11年オフに就任したジェフ・ルーノーGMは、有能ではあるけれども酷薄な人物との評判が付きまとい、カーディナルス時代から周囲との摩擦や衝突を招いてきた。15年にカーディナルスのスタッフがアストロズのデータベースにハッキングを仕掛けた事件も、ルーノーへの個人的な怨恨が動機の一つだったとされている。

 ルーノーGMは14年の新人ドラフトでも騒動を引き起こした。全体1位で指名した高校生左腕ブレイディ・エイケンと一度は契約金650万ドルで合意に至りながら、身体検査でヒジに異常が見つかったことなどを理由に約300万ドルに値切ろうとし、入団を拒否されたのだ。これに連動してスロットマネーが減額されたため、5巡目指名のジェイコブ・ニックスとの契約もご破算になった。エイケンは実際に大学へ進んだ15年にトミー・ジョン手術へ至ったので、アストロズの判断自体は正しかったのだが、もっと誠意を持って交渉に当たっていれば結果は違っていたかもしれなかった。
 

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