高校野球

【甲子園】どちらが勝ってもおかしくなかった好ゲームの中で…京都国際と尽誠学園を隔てた2番打者の役割の差<SLUGGER>

氏原英明

2025.08.17

尽誠学園に3対1で勝利した京都国際。勝敗を分けた両軍の差とは何だったのか。 写真:THE DIGEST写真部

 試合時間1時間51分の好ゲームは、昨夏覇者の京都国際に軍配が上がった。

 どちらが勝ってもおかしくない紙一重のゲームだった。つまり、ディフェンディング・チャンピオンに挑んだ尽誠学園が、京都国際に肉薄したということである

 勝者の京都国際・小牧憲継監督が「相手のエースを見て選手たちも感じたことがあった試合」といえば、尽誠学園監督の西村太監督も「1点の重要性を再認識した試合」と述べ、両者ともにが何かを感じた試合だったようだ。

 この試合は1回表に、京都国際が1点を先制してスタートした。1死から2番の長谷川瑛士がセンター前ヒットで出塁。2死後に4番・清水詩太も続いてチャンスメイクすると、相手の守備のミスに乗じて1点を先行した。尽誠学園の反撃は5回裏、ヒットと2つの四球で2死満塁の好機をつかむと、4番の広瀬賢汰がライト前に運んで二者が生還。逆転に成功した。

 その後は両者の鍔迫り合いが続いたが、先に点を挙げたのは京都国際だった。8回表に2死二、三塁のチャンスを作り、3番・小川 礼斗のライト前安打で逆転。そのまま試合を制した。

 息詰まるような試合だったが、両者を隔てたものはなんだったのか。
 
「さすがの粘りでした。守備もそうでしたけど、8回表に送りバントを防いだ後に最低限のバッティングをしてきました。あれを甲子園でもやりきるのが本当にさすがと思いました」

 尽誠学園の西村監督はそう話す。逆転のシーンに繋がった際に試合を動かした長谷川颯、長谷川瑛士を評価した。

 8回の場面、京都国際は無死から先頭の尾角凌がレフト前ヒットで出塁するも、9番の西村一毅が送りバントを失敗する嫌な流れだった。だが、1番の長谷川颯がセカンドへの内野安打でつなぐと、もう一人の長谷川はセーフティバント。これが送りバントになって逆転劇を演出したのである。

 確かに、2人の活躍はこの試合を振り返る上でポイントになったが、両チームで明らかに違っていたのはその役割だ。実はこの試合は2番打者がキーを握っていた。

 京都国際はこの日、エースの西村を温存。前回の試合で160球完投、そこから中2日では体力的にキツく、7回までは先発した酒谷佳紀で乗り切って欲しいというのが算段だった。だが、逆に尽誠学園からしてみれば、その西村が登板する前に、いかにリードするかだった。

 1回に先制を許した後は、尽誠学園が果敢に攻めた。3回裏には先頭の9番・奥一真がライト前ヒット。1番の金丸淳哉の打席で盗塁を試みると、これが相手のミスを誘って、無死三塁と大きなチャンスになった。しかし、金丸はショートライナーに倒れ、2番・木下立晴がセーフティスクイズを試みた。しかし、スクイズは警戒されており、前進守備によりホームで憤死した。

「セーフティスクイズはこれがうちの戦術。サインを出しました。相手の守備の粘りがよかったです」

 いわば、「2番打者の作戦はそれしか選択肢がなかった」のだ。それが京都国際の守備の網にかかった形だ。
 
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「うちの2番は何でもできる」