現地10月24日（日本時間25日）に開幕するワールドシリーズは、トロント・ブルージェイズとロサンゼルス・ドジャースという顔合わせになった。現地メディアでは両者にまつわる様々な“因縁”が取り沙汰されているが、とりわけ2023年オフに生まれたそれはあまりにも有名。大谷翔平がエンジェルスからFAとなった際に、ドジャースと最後まで激しい争奪戦を繰り広げていたのがブルージェイズだった。

　今回の頂上決戦が実現したことで、現地メディアでも当時の記憶が再び掘り起こされている。米メディア『MLB.com』ブルージェイズ番のキーガン・マシソン記者は現地10月21日、大谷が2023年12月４日にフロリダ州デューネディンにあるブルージェイズの施設を極秘で訪問した際のエピソードを披露している。
  　大谷の訪問当日、ブルージェイズの施設は完全に空にされ、若手選手には「ロジャース（オーナー）の会議がある」と説明されていたが、主力選手は状況を理解して口を閉ざしていたという。また、同記者は「ジョン・シュナイダー監督は2024年に当時を振り返り、『まるで大統領が来るかのようだった。本当に』と当時の緊張感を語った。シュナイダー監督らフロント陣は、空の駐車場を見下ろす部屋で黒いSUVの到着を待っていた」と当時の状況を記している。

　施設を隅々まで見学したという大谷は、最後にスプリングトレーニングのロッカールームを訪れ、そこには大谷用のジャージ、トレーニング用品、お気に入りのアクセサリーまで、「細部にわたって用意されたロッカーが設置されていた」という。

　マシソン記者は、「最も印象的だったのは、大谷がロッカーの荷物を袋に詰めて持ち帰ったことだった。誰もこれを予想していなかった」と振り返る。さらに「大谷の愛犬デコイが、ブルージェイズが用意したカナダの犬用ジャケットを着て大谷の後ろを走る姿も目撃された」と回想している。

　シュナイダー監督は「もし何かあるなら、彼がミーティングで持ち帰ったブルージェイズの帽子を返してもらいたい」と笑いながら語ったという。結果的に大谷はドジャースと10年7億ドルで契約したが、ブルージェイズは財政面でドジャースと対等に競い合っていたとされている。

　マシソン記者は「ブルージェイズがいかに大谷獲得に近づいていたか、いかに現実的だったかを覚えておくことが重要だ」と強調。「今も悲痛な思いは生きている」というブルージェイズは、はたしてワールドシリーズでドジャースを相手にいかなる戦いを見せてくれるだろうか。

構成●THE DIGEST編集部

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