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バムガーナーは117球完投から中2日で5イニングの熱投、ジョンソンは104球の翌日に救援マウンド...ワールドシリーズ“漢気登板列伝”<SLUGGER>

SLUGGER編集部

2025.10.29

14年のワールドシリーズ第7戦でのバムガーナーの熱投は今も語り継がれている。写真:GETTY IMAGES

 延長18回、6時間39分という球史に残る死闘が演じられたワールドシリーズ第3戦。延長17回、第2戦で完投勝利を挙げたばかりの山本由伸がブルペンでにわかに準備を始めた。105球を投げてからわずか中1日での登板は結果的に実現しなかったが、「マジ!?」と驚く佐々木朗希の映像とともに日本では大きな話題を呼んだ。

  実は、ワールドシリーズという大舞台においては、このような投手起用は決して珍しいことではない。

 近年では、2014年ワールドシリーズ第7戦でのマディソン・バムガーナー(ジャイアンツ)が記憶に新しい。第5戦で117球の完封勝利を挙げたバムガーナーは、第7戦でも3対2でリードした4回から中2日で登板。そのまま最後まで投げ抜き、5イニングを被安打2本のみ、無失点に封じてチームに優勝をもたらした。

 その秋のバムガーナーはまさに神がかっていた。2完投を含め、7登板で単一ポストシーズン最多記録となる52.2回を投げ抜き、防御率は1.03。彼の左腕一本でチームに優勝をもたらした――とはさすがに言い過ぎかもしれないが、そう表現したくなるくらいの快投ぶりだったことは間違いない。

 第7戦終了後、バムガーナーは「球数やイニングのことは考えなかった。他の誰かが必要になるまで、とにかくアウトを取ることだけに集中した」と語った後、こう付け加えた。「でもね、さすがにちょっと疲れたよ」。

 今から25年前、01年のワールドシリーズにおけるランディ・ジョンソン(ダイヤモンドバックス)の熱投も神話と化している。

 この年、カート・シリングとのWエースで創設4年目の新興球団をリーグ優勝に導いたジョンソンは、ワールドシリーズで当時世界一3連覇中のヤンキースと対戦。ヤンキースが3勝2敗と王手をかけて臨んで第6戦では、7回2失点の好投でチームに勝利をもたらした。
 
 さらに第7戦では、1対2で迎えた8回途中からマウンドへ。前夜に104球投げた疲れを微塵も感じさせず、9回表まで打者4人から2つの三振を奪ってマウンドを降りた。

 するとその裏、味方打線が史上最強の守護神マリアーノ・リベラを攻め立てて1死満塁のチャンスを作り、ルイス・ゴンザレスが1死満塁から逆転サヨナラ打。ダイヤモンドバックスは劇的な形でワールドチャンピオンとなり、ジョンソンはシリングとともにシリーズMVPに選ばれた。

 実は第6戦の7回、ジョンソンはジョン・ブレンリー監督は「ここで代えるから、明日も投げてくれないか?」と打診されていたという。ジョンソンは二つ返事でOKした。「だって、そのためにプレーしているんだから」。

 レギュラーシーズンでは先発投手に球数制限やイニング制限を課すことが多いメジャーリーグだが、ポストシーズンは一転して"特攻起用"を厭わない。むしろ、10月の舞台で最後まで戦い抜く体力を温存するために、レギュラーシーズンでブレーキをかけている節すらある。ワールドチャンピオンリングを手にすることは、それほどの名誉なのだ。

構成●SLUGGER編集部

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