莫大な資金力を背景に大型補強を進めるロサンゼルス・ドジャースに対し、他球団ファンや一部メディアから「野球を台無しにしている」との批判が、以前から巻き起こっている。
ドジャースは近年、2024年シーズンに大谷翔平と10年7億ドル(当時約1015億円)、山本由伸と12年3億2500万ドル(当時約465億円)で契約。さらにトレードで獲得したタイラー・グラスノーと5年1億3650万ドル(当時約191億円)で契約し、テオスカー・ヘルナンデスとも1年2350万ドル(当時約36億円、24年オフに3年6600万ドル=当時約104億円で再契約)で契約した。
25年シーズンにはブレイク・スネルを5年1億8200万ドル(当時約270億円)で迎え入れ、さらにマイナー契約で佐々木朗希を獲得。ムーキー・ベッツやフレディ・フリーマン、ウィル・スミス、マックス・マンシーら既存戦力に有力選手を加えたドジャースが、24年と25年のワールドシリーズを制覇している。
そんなドジャースについて、ニューヨーク在住のスポーツライター、ハンナ・カイザー氏が、英紙『Guardian』で「金満ドジャースは球界にとって悪なのか? それならなぜ、ワールドシリーズはあんなに楽しかったのか?」と題した記事を公開。ドジャースの補強戦略を肯定した。
「ドジャースがふたたび王座についた。有力選手をかき集めるドジャースのやり方に、一部から破滅の前兆というような声も挙がっていた。莫大な資金力を持つチームが勝った事実を"不公平"と呼ぶ者もいるだろう。そんな人々にとって、ドジャースの連覇は"悪い出来事"かもしれない。しかし、野球を愛するファンが秋のクラシック(ワールドシリーズ)に熱狂したのも事実だ。それほど、今年のワールドシリーズは最高だった。この先、今年のワールドシリーズを見て野球ファンになったという者が、必ず現われるだろう」
カイザー氏は、もしトロント・ブルージェイズが優勝していたとしても、壮大なドラマが散りばめられたワールドシリーズの全7試合が色褪せることはないと主張。「ドジャースがシーズン前から優勝候補だったからといって、実際にシーズンを制するのは容易ではない。ドジャースは全力を尽くして栄冠を勝ち取った。勝敗を分けたのはほんのわずかな差にすぎない。勝負がどちらに転がるのか、最後の最後まで予想できなかった。今年のワールドシリーズが"壊されたスポーツ"の姿だとしたら、それを直す必要なんてない」と記している
同じように大金を使っているチームが、メジャーには存在する。例えばスポーツ史上最高額の15年7億6500万ドル(当時約1147億円)を費やしてフアン・ソトと契約したニューヨーク・メッツだ。カイザー氏は、「ドジャースは金の使い方がうまい。ポストシーズンに進めなかった今年のメッツを見れば分かるように、当たり前にできることではないのだ。ドジャース擁護派も否定派も、これは認めなければいけない。昨今のスポーツ界では、魅力的なチームを作るには多額のコストがかかるのは当たり前。ボストン・レッドソックスとアトランタ・ブレーブスが支払えなかった額をドジャースは用意し、ベッツ、フリーマンと契約した。何人もの故障者を出しながら、ドジャース投手陣の層は最後まで厚かった」。
続けて、カイザー氏は大谷にも言及。「"現代のベーブ・ルース"と呼ばれる男は、もうひとつのロサンゼルスのチームで6年も燻っていた。マイク・トラウトという偉大な選手とともにプレーしても、たった1度もポストシーズンの舞台に立てなかった。ここに野球の難しさと面白さがある。野球は1~2人のスター選手だけでは勝てないスポーツなのだ。エンジェルスにずっと所属してポストシーズンに出ないより、ドジャースでシーズンの最後までプレーする大谷を見られるほうが、野球界にとってはるかにいいことだ」と、大谷のドジャース移籍、そしてドジャースの大谷獲得を全肯定している。
山本についても、「ドジャースは投手メジャー最高額を提示し、山本は勝てるチームとしてドジャースを選んだ。結果的にドジャースは、山本の活躍でシーズンを制した。有望選手に高額オファーを準備したチームが、ワールドシリーズを制覇したシステムのどこに欠陥があるのか」と記して、ドジャースのやり方を認めている。
資金力をもって有力選手を獲得し、他球団との年俸格差を生んでいるドジャースへの批判の声は、今後も続くだろう。それでもドジャースが、極上のエンターテインメントを提供し、野球の魅力を広く発信し続けているのも事実だ。
「最も努力して才能を集めたチームが優勝するのは、はたして不公平なのか? 私は公平だと思う。ドジャースのポストシーズンを見ていて楽しかったか? もちろんだ。間違いなく楽しかった」
カイザー氏は今年のメジャーリーグを、とりわけポストシーズンとワールドシリーズを存分に楽しんだようだ。
構成●THE DIGEST編集部
【動画】WSを制した"ドジャース版特別ハイライト" & ドジャーブルーに染まった優勝パレード
ドジャースは近年、2024年シーズンに大谷翔平と10年7億ドル(当時約1015億円)、山本由伸と12年3億2500万ドル(当時約465億円)で契約。さらにトレードで獲得したタイラー・グラスノーと5年1億3650万ドル(当時約191億円)で契約し、テオスカー・ヘルナンデスとも1年2350万ドル(当時約36億円、24年オフに3年6600万ドル=当時約104億円で再契約)で契約した。
25年シーズンにはブレイク・スネルを5年1億8200万ドル(当時約270億円)で迎え入れ、さらにマイナー契約で佐々木朗希を獲得。ムーキー・ベッツやフレディ・フリーマン、ウィル・スミス、マックス・マンシーら既存戦力に有力選手を加えたドジャースが、24年と25年のワールドシリーズを制覇している。
そんなドジャースについて、ニューヨーク在住のスポーツライター、ハンナ・カイザー氏が、英紙『Guardian』で「金満ドジャースは球界にとって悪なのか? それならなぜ、ワールドシリーズはあんなに楽しかったのか?」と題した記事を公開。ドジャースの補強戦略を肯定した。
「ドジャースがふたたび王座についた。有力選手をかき集めるドジャースのやり方に、一部から破滅の前兆というような声も挙がっていた。莫大な資金力を持つチームが勝った事実を"不公平"と呼ぶ者もいるだろう。そんな人々にとって、ドジャースの連覇は"悪い出来事"かもしれない。しかし、野球を愛するファンが秋のクラシック(ワールドシリーズ)に熱狂したのも事実だ。それほど、今年のワールドシリーズは最高だった。この先、今年のワールドシリーズを見て野球ファンになったという者が、必ず現われるだろう」
カイザー氏は、もしトロント・ブルージェイズが優勝していたとしても、壮大なドラマが散りばめられたワールドシリーズの全7試合が色褪せることはないと主張。「ドジャースがシーズン前から優勝候補だったからといって、実際にシーズンを制するのは容易ではない。ドジャースは全力を尽くして栄冠を勝ち取った。勝敗を分けたのはほんのわずかな差にすぎない。勝負がどちらに転がるのか、最後の最後まで予想できなかった。今年のワールドシリーズが"壊されたスポーツ"の姿だとしたら、それを直す必要なんてない」と記している
同じように大金を使っているチームが、メジャーには存在する。例えばスポーツ史上最高額の15年7億6500万ドル(当時約1147億円)を費やしてフアン・ソトと契約したニューヨーク・メッツだ。カイザー氏は、「ドジャースは金の使い方がうまい。ポストシーズンに進めなかった今年のメッツを見れば分かるように、当たり前にできることではないのだ。ドジャース擁護派も否定派も、これは認めなければいけない。昨今のスポーツ界では、魅力的なチームを作るには多額のコストがかかるのは当たり前。ボストン・レッドソックスとアトランタ・ブレーブスが支払えなかった額をドジャースは用意し、ベッツ、フリーマンと契約した。何人もの故障者を出しながら、ドジャース投手陣の層は最後まで厚かった」。
続けて、カイザー氏は大谷にも言及。「"現代のベーブ・ルース"と呼ばれる男は、もうひとつのロサンゼルスのチームで6年も燻っていた。マイク・トラウトという偉大な選手とともにプレーしても、たった1度もポストシーズンの舞台に立てなかった。ここに野球の難しさと面白さがある。野球は1~2人のスター選手だけでは勝てないスポーツなのだ。エンジェルスにずっと所属してポストシーズンに出ないより、ドジャースでシーズンの最後までプレーする大谷を見られるほうが、野球界にとってはるかにいいことだ」と、大谷のドジャース移籍、そしてドジャースの大谷獲得を全肯定している。
山本についても、「ドジャースは投手メジャー最高額を提示し、山本は勝てるチームとしてドジャースを選んだ。結果的にドジャースは、山本の活躍でシーズンを制した。有望選手に高額オファーを準備したチームが、ワールドシリーズを制覇したシステムのどこに欠陥があるのか」と記して、ドジャースのやり方を認めている。
資金力をもって有力選手を獲得し、他球団との年俸格差を生んでいるドジャースへの批判の声は、今後も続くだろう。それでもドジャースが、極上のエンターテインメントを提供し、野球の魅力を広く発信し続けているのも事実だ。
「最も努力して才能を集めたチームが優勝するのは、はたして不公平なのか? 私は公平だと思う。ドジャースのポストシーズンを見ていて楽しかったか? もちろんだ。間違いなく楽しかった」
カイザー氏は今年のメジャーリーグを、とりわけポストシーズンとワールドシリーズを存分に楽しんだようだ。
構成●THE DIGEST編集部
【動画】WSを制した"ドジャース版特別ハイライト" & ドジャーブルーに染まった優勝パレード