「セーブ王を獲れると思ったからオリックスに来たんですよ」
2017年オフに日本ハムからFA宣言し、オリックスに移籍した増井浩俊。2018年シーズン序盤、初めて増井を取材したとき、そう語っていた。
この年は、シーズン序盤からセーブランキングトップを走り、オールスターにもファン投票の救援部門で選ばれるなど順調だった。後半に入りチームが大失速したこともあり、セーブ王はソフトバンクの森唯斗に逆転されたものの、63試合に登板、35セーブを挙げる活躍を見せた。
「増井さんは本当に凄いですよ。いろんなことを教えてくれます」
そう語っていたのは、一昨年シーズンまでセットアッパーとして増井の前を投げていた山本由伸だった。
山本によれば、増井は自身の経験を惜しみなく話したという。また近藤大亮ら他のブルペン陣ともプライベートで交流を持ち、チームに溶け込んでいった。オフの日は増井の家に集まり映画鑑賞を行うほどだったという。
移籍2年目の昨シーズンは、山本が先発に回ったことで、ブルペンがうまく機能しなかった。山本に代わるセットアッパーとして、澤田圭佑、近藤を起用したが、全体的に打ち込まれることが多く、勝利の方程式を固定できなかった。増井は開幕から2年連続でクローザーに起用されたが、救援失敗が続き苦しんだ。
「3試合連続でやられることはないので……」
常に切り替えて試合に臨んでいた増井だったが、生命線であるフォークのキレが思わしくなく、首脳陣は登録抹消や配置転換をするなど、増井の復調を待ち続けた。昨年は150セーブと150ホールドの偉業を達成できたとはいえ、終わってみれば、53試合登板、1勝4敗14ホールド18セーブと平凡なもので、防御率はキャリアワーストの4.83。シーズンの後半はクローザーの座をディクソンに奪われた。
「昨年は不安がって投げてましたね。打たれても仕方がないぐらいの気持ちで自分のピッチングを確立しないといけないなと思ってます」
春季キャンプでは「球種は増やさずに」持ち球の確認をしながら投げ込んだ。生命線であるフォークを生かすためには、150キロを超えるストレートの重要性を再確認。ストレートが走っているときの調子の良さは自身でも感じでおり、昨季の不調も、ストレートの走りに陰りが見えたことが原因だと本人は分析する。自分のピッチングを取り戻せば、再び頼れる「守護神」に戻れるはずだ。
「もちろんセーブ王を獲る気持ちは変わりません。ただ失った位置は取り戻さないと。また信頼してもらえるように頑張ります」
今季の増井には「守護神」のポジションは用意されていない。
ディクソンが優位の状態から、2人の争いというのが現実的な構図だ。ただ、増井とディクソンが切磋琢磨することにより、他の中継ぎ陣に与える好影響はあるだろう
勝利の方程式を固定するためにも、増井の存在は不可欠。
復調を期待したい。
文●どら増田(スポーツライター)
【著者プロフィール】
どらますだ/1973年生まれ。プロ野球では主にオリックスを取材し、週刊ベースボールの他、数々のウェブ媒体でも執筆している。書籍『ベースボールサミット 第9回 特集オリックス・バファローズ』(カンゼン)ではメインライターを務めた。プロレス、格闘技も取材しており、昨年は山本由伸と那須川天心の"神童"対談を実現させた。
【PHOTO】オリックス宮崎キャンプの模様をお届け!
2017年オフに日本ハムからFA宣言し、オリックスに移籍した増井浩俊。2018年シーズン序盤、初めて増井を取材したとき、そう語っていた。
この年は、シーズン序盤からセーブランキングトップを走り、オールスターにもファン投票の救援部門で選ばれるなど順調だった。後半に入りチームが大失速したこともあり、セーブ王はソフトバンクの森唯斗に逆転されたものの、63試合に登板、35セーブを挙げる活躍を見せた。
「増井さんは本当に凄いですよ。いろんなことを教えてくれます」
そう語っていたのは、一昨年シーズンまでセットアッパーとして増井の前を投げていた山本由伸だった。
山本によれば、増井は自身の経験を惜しみなく話したという。また近藤大亮ら他のブルペン陣ともプライベートで交流を持ち、チームに溶け込んでいった。オフの日は増井の家に集まり映画鑑賞を行うほどだったという。
移籍2年目の昨シーズンは、山本が先発に回ったことで、ブルペンがうまく機能しなかった。山本に代わるセットアッパーとして、澤田圭佑、近藤を起用したが、全体的に打ち込まれることが多く、勝利の方程式を固定できなかった。増井は開幕から2年連続でクローザーに起用されたが、救援失敗が続き苦しんだ。
「3試合連続でやられることはないので……」
常に切り替えて試合に臨んでいた増井だったが、生命線であるフォークのキレが思わしくなく、首脳陣は登録抹消や配置転換をするなど、増井の復調を待ち続けた。昨年は150セーブと150ホールドの偉業を達成できたとはいえ、終わってみれば、53試合登板、1勝4敗14ホールド18セーブと平凡なもので、防御率はキャリアワーストの4.83。シーズンの後半はクローザーの座をディクソンに奪われた。
「昨年は不安がって投げてましたね。打たれても仕方がないぐらいの気持ちで自分のピッチングを確立しないといけないなと思ってます」
春季キャンプでは「球種は増やさずに」持ち球の確認をしながら投げ込んだ。生命線であるフォークを生かすためには、150キロを超えるストレートの重要性を再確認。ストレートが走っているときの調子の良さは自身でも感じでおり、昨季の不調も、ストレートの走りに陰りが見えたことが原因だと本人は分析する。自分のピッチングを取り戻せば、再び頼れる「守護神」に戻れるはずだ。
「もちろんセーブ王を獲る気持ちは変わりません。ただ失った位置は取り戻さないと。また信頼してもらえるように頑張ります」
今季の増井には「守護神」のポジションは用意されていない。
ディクソンが優位の状態から、2人の争いというのが現実的な構図だ。ただ、増井とディクソンが切磋琢磨することにより、他の中継ぎ陣に与える好影響はあるだろう
勝利の方程式を固定するためにも、増井の存在は不可欠。
復調を期待したい。
文●どら増田(スポーツライター)
【著者プロフィール】
どらますだ/1973年生まれ。プロ野球では主にオリックスを取材し、週刊ベースボールの他、数々のウェブ媒体でも執筆している。書籍『ベースボールサミット 第9回 特集オリックス・バファローズ』(カンゼン)ではメインライターを務めた。プロレス、格闘技も取材しており、昨年は山本由伸と那須川天心の"神童"対談を実現させた。
【PHOTO】オリックス宮崎キャンプの模様をお届け!