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MLB

「創造的破壊という感覚なので怖さはない」菊池雄星が選択したメジャーで勝つための変化

氏原英明

2020.03.05

メジャーに行ってもなお、底なしの知識欲を保ち続けるのは、菊池の能力の一つだろう。(C)Getty Images

メジャーに行ってもなお、底なしの知識欲を保ち続けるのは、菊池の能力の一つだろう。(C)Getty Images

 頭がさらにバージョンアップしている、そんな印象だった。

 マリナーズの菊池雄星が、現地5日(日本時間6日)に3度目の先発に挑む。これまで2戦はストレートの球速が156キロを計測するなど、昨季までとの違いを見せている。

 このスプリングトレーニングで菊池が話題をさらっているのは、投球フォームを大幅に変えたことだ。これまでテークバックの際に足の後方に置いていたものを早い段階から高く上げるフォームに変えた。

 見た目だとリリースの位置が高くなり、腕が振りやすくなった印象を受ける。

 しかし、そんな感想をぶつけてみると、あっさりと否定した。

「5センチくらい高くなっていますね。でも、そこを目指してテークバックを変えたわけではないんですよ。結果的に、そうなっただけです。もちろん、リリースが高い方が良い部分はあります。投げられる球種が増えますからね。ただ、まずは、ストレートの球速にこだわって変えたんです」
 
 これまでの菊池が大事にしてきたのは、テークバックで力をためて腕のしなりを使って投げるという投球フォームだったが、それをひっくり返したのだから、その決断にはただただ驚きである。

「メジャーでは実績も何もない選手ですからね。日本時代に何勝したとか、どんなフォームだったとか引きずっても良いことは一つもない。創造的破壊という感覚でいたので、変えることの怖さはなかったです」

 メジャーで勝つために必要なフォームと踏んだわけである。
 では、なぜ、テークバックを変えたのか。

「大事なのは時間×距離なんです。体は柔らかいほうがいいとか、テークバックは時間があったほうが加速できるという原理はありますけど、前足がついてから投げるまでに時間がありすぎると、それまでにため込んだ力をロスしてしまうんですよね。そこはどっちを取るかのバランスなんですけど、理屈としては時間を短くした方が球速は上がりやすくなる。ドライブラインがやっているのも、結局、そういうことなんです。重たいボールを持たせて魔法のボールとか言いますけど、魔法でもなんでもなくて、テークバックの時に、力を逃さないようにしてスピードを出すという原理。最近、野球の指導で槍投げをするのが目立つようになってきましたけど、あれも理にかなっている。前脚がついた途端に投げるじゃないですか。要するにどっちを取るかのバランスが必要だと思います」
 

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