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カブスのロス新監督が抱えるリスクとメリット。「監督と選手」に変わった元同僚10名との関係性はどうなる?

宇根夏樹

2020.03.18

ロス新監督は16年の世界一メンバー。当時のチームメイトが現在も多数在籍している。 (C)Getty Images

 今オフは、30球団中10球団の監督が交代した。カブスもその一つ。5年契約の満了とともにジョー・マッドンが退任し、後任にデビッド・ロスが就任した。

 ロスにとって、カブスは古巣だ。控え捕手だったロスは、キャリア最後の2015~16年をカブスで過ごした。

 カブスは16年に"山羊の呪い"を解き、108年ぶりのワールドシリーズ優勝を果たした。開幕前からラストシーズンとすることを宣言していたロスは、レッドソックス時代の13年に続く優勝で有終の美を飾った。翌年、ロスは『チームメイト:僕のベースボール人生と球史に残るワールドシリーズ』と題した本を出版した。表紙の写真は、自身のカブス時代。序文は、カブスの編成責任者、セオ・エプスティーンが書いている。

 現在のカブスには、当時の優勝メンバーが数多く残っている。野手は、一塁手のアンソニー・リゾー、三塁手のクリス・ブライアント、遊撃手のハビア・バイエズ、捕手のウィルソン・コントレラスに、3人の外野手、ジェイソン・ヘイワード、カイル・シュワーバー、アルバート・アルモーラJr.。先発投手は、ジョン・レスターとカイル・ヘンドリクスだ。彼らに加えてクローザーのクレイグ・キンブレルは、10~12年にブレーブスでロスとバッテリーを組んだ間柄(なお当時のブレーブスにはヘイワードも在籍していた)。今季のカブスには、ロス監督の現役時代のチームメイトが10人も揃う。
 
 カブスでプレーした時、ロスはチームメイトから「グランパ(おじいちゃん)」と呼ばれて慕われていた。ヘイワードはブレーブスでメジャーデビューした頃にロスの庇護を受け、メジャーリーガーとしてどう振る舞うべきかを教わったという。

 こうしたことからすると、元チームメイトの多さは、ロスにとってプラスに働くように思える。けれども、その関係はかつての「選手と選手」ではなく「監督と選手」だ。ロスの起用や采配が、その選手の意に反していた場合、それまでの関係が良好だっただけに、かえってこじれる危険性もはらんでいる。特に、チームが低迷しているとそういう内紛が起こりやすい。

 なお、ロスとダルビッシュ有がチームメイトになったことはないが、13年に1試合で対戦している。当時ロスはレッドソックスの控え捕手、対するダルビッシュはレンジャーズに在籍していた。結果は、1打席目が先制2ラン本塁打、2打席目は三振、3打席目は四球。現在のカブスにいる選手で、ロスにホームランを打たれたことがあるのはダルビッシュだけだ。

文●宇根夏樹

【著者プロフィール】
うね・なつき/1968年生まれ。三重県出身。『スラッガー』元編集長。現在はフリーライターとして『スラッガー』やYahoo! 個人ニュースなどに寄稿。著書に『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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