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MLB

【2010年代MLB新語辞典:前編】WAR、スタットキャスト、タンキング……この10年で生まれた新たな概念を解説!

出野哲也

2020.04.10

2012年のトラウトはリーグトップのbWAR10.5を記録したにもかかわらずMVP受賞を逃し、議論が巻き起こった。(C)Getty Images

2012年のトラウトはリーグトップのbWAR10.5を記録したにもかかわらずMVP受賞を逃し、議論が巻き起こった。(C)Getty Images

 2010年代のMLBでは新たな概念が多く生まれた。この2010年代MLB新語辞典』では、10年代に生まれた用語のうち、重要なものを厳選して解説する。

▼WAR【Wins Above Replacement】
 リプレイスメントレベル(代替可能=メジャーリーガーとして最低レベルの選手)と比べ、どれだけ勝利に貢献したかを示す指標。打撃・守備・走塁・投球などすべての要素を包括し、単一の数字として表した点に意義があり、選手の総合的な価値を最も簡潔に示す指標として、現在ではアウォード投票において最も参考とされる指標の一つとなっている。
 
 記録系ウェブサイトのファングラフスとベースボール・レファレンスが、それぞれの計算法に基づいて弾き出した通称fWARとbWARの2種類が存在する。
 
 2012年には45年ぶりの三冠王となったミゲル・カブレラ(タイガース)がア・リーグMVPに選ばれたが、bWARは走攻守すべてにおいてハイレベルだった新人のマイク・トラウト(エンジェルス)の方がずっと上だった。この結果を受け、真にMVPにふさわしいのはどちらかという論争が巻き起こり、WARの知名度が飛躍的に高まった。

▼ユーティリティ・プレーヤー【Utility Player】
 単一の守備位置に限らず、内野ならどこでも守れたり、内外野どちらもこなせたりするような融通の利く選手の呼び名。ベン・ゾブリスト(カブス、二塁+外野)やマーウィン・ゴンザレス(ツインズ、内外野すべて)が代表的な存在である。
 
 古くからこうしたタイプの選手はいて、野球用語としてもMLB誕生前から使われているが、多くの場合は控えレベルで〝便利屋〞の域を出なかった。しかし、近年はブルペンの分業化が進んだ結果、多数のリリーフ投手をロースターに入れるために野手の登録数が削られ、レギュラークラスでも複数のポジションで起用されることが多くなった。またシフトが多用されるようになって、守備の難度が下がってきたことも背景にある。
 
▼コリジョン・ルール【Collision Rule】
 ホームベース上で捕手に落球させることを狙って、走者が故意にタックルする行為を禁止したルール。11年5月、前年に新人王を受賞した好捕手バスター・ポージー(ジャイアンツ)がタックルされて重傷を負い、残りのシーズンを棒に振る羽目に陥った。これがきっかけで危険なスライディング/タックルの横行が問題視され、14年から走者による捕球妨害は自動的にアウトとなるルールが定められた。また同時に、捕手もボールを持っていない限りは、走者の進路を塞ぐことは認められなくなった。コリジョン(衝突)を防ぐ目的から「コリジョン・ルール」、もしくはポージーの名を取って「ポージー・ルール」とも呼ばれる。
 
 また15年のプレーオフでは、チェイス・アトリー(当時ドジャース)が併殺阻止を狙った二塁へのスライディングで、ルーベン・テハーダ(当時メッツ)を負傷させたことが問題となり、翌16年からこうした「併殺崩し」も認められなくなった。こちらは「アトリー・ルール」の通称で呼ばれている。 
 

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