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プロ野球

ヤクルトのドラ4位右腕・大西広樹、苦い思い出が残る神宮で踏み出したプロでの第一歩

山本祐香

2020.06.22

上背は決して大きくないが、闘志あふれる投球が魅力の大西。今後の活躍に期待が集まる。写真:産経新聞社

上背は決して大きくないが、闘志あふれる投球が魅力の大西。今後の活躍に期待が集まる。写真:産経新聞社

 ヤクルトのドラフト4位ルーキー大西広樹がプロ初のマウンドに上がった。

 昨年12月に開催された新入団選手発表会で1年目の目標を「開幕一軍」と定めた右腕は、チーム大卒ルーキー3人の中で唯一、切符を勝ち取った。ヤクルトでルーキーが開幕一軍に名を連ねるのは3年ぶりのことだ。

 最初の2試合は出番がなかった大西だったが、6月21日の対中日3回戦、プロ初登板の機会がやってきた。3点ビハインドの8回にマウンドに上がると、先頭の木下拓哉にヒットを許すも、次のアルモンテを初球で併殺に打ち取り、落ち着いた投球を見せた。この回打者5人に対して12球を投げ、2安打無失点と及第点のデビューを果たした。
 
 大阪商業大学時代は関西六大学リーグで27勝2敗と圧倒的な結果を残してきた。中日ドラフト2位の橋本侑樹とともに投手の要としてチームを引っ張り、東京ドームと神宮球場で行われる春の大学選手権に3度、神宮球場で行われる秋の明治神宮大会に2度と、全国大会にも5度出場している。ただ、ヤクルトのホームである神宮球場で投げた試合で勝ち星を挙げられなかったのが心残りだった。

 そんな大西の大学時代で最も印象に残っているのが、ベスト8で敗れた昨秋の明治神宮大会でのことだ。

 1回戦の東海大札幌戦に先発した大西は、初回に3安打を浴びて1失点、2回には先頭打者に内野安打を許し次打者にストレートの四球を与えたところで降板。チームも得点を挙げることができず、0-2で敗戦した。

 この日の試合後、大西は泣いていた。

「最後の決め球を2個ぐらい低く投げられていたら」と、自分の投球を悔やむ気持ちももちろんあったが、その涙は大阪商業大学・富山陽一監督を思ってのものだった。

「監督さんに出会って、投げさせてもらって、リーグ優勝をさせてもらった。それでも最初はチームが強いという実感がなかったから、もっともっと上を目指そうと思っていろいろ考えました。考えれば考えるだけ変化球の種類が増えて、カットボール、フォーク、シンカーを自分で投げられるようになりました。監督さんには一番感謝しています。自分のことを息子のようだと言ってくれた。僕にとって、監督さんは『野球の親父』です」

 そこまで言うと、大西は言葉を発せなくなるほど泣きじゃくった。自分を育ててくれた富山監督のために日本一になりたい、その思いが大西の原動力だった。明治神宮大会はトーナメント戦。優勝したチーム以外は負けて最後を迎える。大西もほろ苦い思い出とともに大学野球生活を終えた。

 それから3ヵ月後の今年2月、ヤクルトの春季キャンプで久しぶりに大西の声が聞けた。

「初めはとても緊張していたんですけど、今はいい緊張感でできています。自分の調子をもっと上げてアピールしていきたいです。斎藤(隆)コーチはバランスを大切にしているので体幹について、石井(弘寿)コーチからは投げ急ぐクセがあるので下半身をもっとしっかりとするように言われています」と、充実の日々を語る大西の表情は明るかった。

 大商大の富山監督とは、今も連絡を取っているという。「調子どうや?」といつも気にかけてくれているという恩師も、大西の神宮球場プロ初登板を喜んでいることだろう。

 プロ野球選手としての一歩を踏み出した大西。これから神宮球場で、たくさんの勝ち星を積み上げていくに違いない。

取材・文●山本祐香(タレント・スポーツライター)

【著者プロフィール】
やまもと・ゆうか。タレント活動の傍ら、愛して止まない野球の“現場の声”を自ら届けるため、2015年よりライターとしても活動。主に日本のアマチュア野球を取材し、『スポチュニティ』などウェブ媒体を中心に執筆している。

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