ニューヨーク・ヤンキースの名遊撃手デレク・ジーターは、主要な打撃タイトルを取ったことはなかった。それでも、彼が誰もが認めるスーパースターだったのは、ここ一番で印象に残る場面をいくつも創り出していたからである。2011年7月9日も、“ザ・キャプテン”の千両役者ぶりを見せつけられた日となった。
本拠ヤンキー・スタジアムでのタンパベイ・レイズ戦、ジーターは通算3000安打にあと2本と迫っていた。これが4連戦の3試合目(2戦目は雨天中止)。その後はオールスターを挟んで遠征に出てしまうため、ニューヨークのファンの目の前で達成するには、2試合で2本打つ必要があった。
「どうしてもここで決めたいと思っていたから、周りには言わなかったけど相当なプレッシャーがあった」。だが、そんな素振りはまったく見せず、いつものように涼しい顔で初回の第1打席はデビッド・プライスからレフト前ヒットを放つ。そして3回の第2打席、フルカウントからの8球目。カーブをすくい上げると、打球はレフトへ高く舞い上がり、スタンドに飛び込んだ。史上28人目、以外にもヤンキースの選手では初めての3000本安打。ホームランで決めたのは史上2人目だった。大歓声の中、ホームに戻ってきたジーターは、笑顔のチームメイトたちにもみくちゃにされた。
この日のジーターはそれでとどまらなかった。第3打席はレフト線への二塁打で、サイクルヒットにリーチをかける。第4打席は右前打、そして4-4で迎えた8回裏の第5打席はセンター前へ弾き返す勝ち越しタイムリーで、これが決勝点。サイクルこそならなかったものの5打数5安打、3000本に関係なく試合のヒーローになった。
「3000本のあとは楽にプレーできた。試合に勝てなきゃ素直に喜べないからね」と語ったジーター。誰もが抱いていた思いを口にしたのは、捕手のラッセル・マーティンだった。「これこそまさしく伝説というものだ」。
文●出野哲也
【著者プロフィール】
いでの・てつや。1970年生まれ。『スラッガー』で「ダークサイドMLB――“裏歴史の主人公たち”」を連載中。NBA専門誌『ダンクシュート』にも寄稿。著書に『プロ野球 埋もれたMVPを発掘する本』『メジャー・リーグ球団史』(いずれも言視舎)。
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本拠ヤンキー・スタジアムでのタンパベイ・レイズ戦、ジーターは通算3000安打にあと2本と迫っていた。これが4連戦の3試合目(2戦目は雨天中止)。その後はオールスターを挟んで遠征に出てしまうため、ニューヨークのファンの目の前で達成するには、2試合で2本打つ必要があった。
「どうしてもここで決めたいと思っていたから、周りには言わなかったけど相当なプレッシャーがあった」。だが、そんな素振りはまったく見せず、いつものように涼しい顔で初回の第1打席はデビッド・プライスからレフト前ヒットを放つ。そして3回の第2打席、フルカウントからの8球目。カーブをすくい上げると、打球はレフトへ高く舞い上がり、スタンドに飛び込んだ。史上28人目、以外にもヤンキースの選手では初めての3000本安打。ホームランで決めたのは史上2人目だった。大歓声の中、ホームに戻ってきたジーターは、笑顔のチームメイトたちにもみくちゃにされた。
この日のジーターはそれでとどまらなかった。第3打席はレフト線への二塁打で、サイクルヒットにリーチをかける。第4打席は右前打、そして4-4で迎えた8回裏の第5打席はセンター前へ弾き返す勝ち越しタイムリーで、これが決勝点。サイクルこそならなかったものの5打数5安打、3000本に関係なく試合のヒーローになった。
「3000本のあとは楽にプレーできた。試合に勝てなきゃ素直に喜べないからね」と語ったジーター。誰もが抱いていた思いを口にしたのは、捕手のラッセル・マーティンだった。「これこそまさしく伝説というものだ」。
文●出野哲也
【著者プロフィール】
いでの・てつや。1970年生まれ。『スラッガー』で「ダークサイドMLB――“裏歴史の主人公たち”」を連載中。NBA専門誌『ダンクシュート』にも寄稿。著書に『プロ野球 埋もれたMVPを発掘する本』『メジャー・リーグ球団史』(いずれも言視舎)。
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