まさか、両者がこれほど譲らない展開になるとは予想だにしなかった。
ペナントレースはいよいよ佳境を迎え、11日からソフトバンクと西武による首位攻防2連戦が行われる。どちらに転んでも優勝マジックが点灯するが、9月1日の前回対決からともに譲り合わず、0.5差が縮まっただけで、再戦を迎えるのである。
天王山第1ラウンドの第2戦に勝った西武がゲーム差なしと迫った8月31日の試合後、球団通算最多安打記録を更新した栗山巧の言葉は、まるでスイッチを押したように両者のデッドヒートの始まりを予感させるものだった。
栗山はゲーム差が0になったことについての心境を問われ、こう答えたのだった。
「ここからがスタートやと思います。やっとスタート地点に並ぶことができたなと。この1週間から10日くらいで劇的に順位が上がってきて、ゲーム差も詰まってきた。打線の集中力や勢いは去年とは違ったものが出てきたんじゃないかなと思います。目の前の試合を全力で戦うことに変わりはありませんが、ここからが面白くなると思います」
翌日、西武はソフトバンクに敗れ、ゲーム差は再び1となったが、その後、両者が対戦しない間は、とにかくどちらも譲らなかった。
西武はソフトバンクとの直接対決の後、神戸でのオリックス戦をスイープ。続く楽天戦は1敗を喫したものの、2勝1敗で勝ち越した。
一方の首位・ソフトバンクも、ホームで楽天を迎えると3連勝。続くロッテ戦の初戦で、エースの千賀滉大がノーヒッターを達成して王者たる所以を見せつけた。翌日に1敗を喫したものの、西武が勝っている限りは負けることはなかった。
ソフトバンクが月曜日のロッテ戦を落として、ゲーム差は0.5となったが、「これからが面白くなる」と栗山が予言した通りの展開で、今季最後の直接対決を迎えるのである。
振り返ると、昨年9月の天王山では西武が5勝1敗と完全勝利を挙げた。
しかし、クライマックス・シリーズではソフトバンクが西武を敵地で圧倒。両者には浅からぬ因縁がある。
11日の予告先発はソフトバンクが高橋礼、西武はニールと発表されている。
すでに11勝を挙げている高橋礼は、そのうち4勝が西武戦。思えば、昨年のCSで、ソフトバンクの日本シリーズ進出が決まった試合で先発したのが高橋だった。西武側からすれば天敵とも言える存在だ。さらに2戦目は前回ノーヒッターの千賀が先発する可能性もあるとのことだ。
一方、ニールは6月の一軍復帰から8連勝と好調をキープしている。ソフトバンク戦は1試合のみだが、しっかりとゲームを作って勝ち投手になっている。強力打線から凡打の山を築いてチームにリズムを呼び込みたい。
昨季、リーグ優勝しながら日本シリーズ進出を逃した西武には忸怩たる思いがあり、ソフトバンクにしても、長年パ・リーグの王者として君臨してきたプライドがある。
両者のぶつかり合いはどちらに転ぶのか。
今シーズン最大の決戦を迎える。
文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)
【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。
ペナントレースはいよいよ佳境を迎え、11日からソフトバンクと西武による首位攻防2連戦が行われる。どちらに転んでも優勝マジックが点灯するが、9月1日の前回対決からともに譲り合わず、0.5差が縮まっただけで、再戦を迎えるのである。
天王山第1ラウンドの第2戦に勝った西武がゲーム差なしと迫った8月31日の試合後、球団通算最多安打記録を更新した栗山巧の言葉は、まるでスイッチを押したように両者のデッドヒートの始まりを予感させるものだった。
栗山はゲーム差が0になったことについての心境を問われ、こう答えたのだった。
「ここからがスタートやと思います。やっとスタート地点に並ぶことができたなと。この1週間から10日くらいで劇的に順位が上がってきて、ゲーム差も詰まってきた。打線の集中力や勢いは去年とは違ったものが出てきたんじゃないかなと思います。目の前の試合を全力で戦うことに変わりはありませんが、ここからが面白くなると思います」
翌日、西武はソフトバンクに敗れ、ゲーム差は再び1となったが、その後、両者が対戦しない間は、とにかくどちらも譲らなかった。
西武はソフトバンクとの直接対決の後、神戸でのオリックス戦をスイープ。続く楽天戦は1敗を喫したものの、2勝1敗で勝ち越した。
一方の首位・ソフトバンクも、ホームで楽天を迎えると3連勝。続くロッテ戦の初戦で、エースの千賀滉大がノーヒッターを達成して王者たる所以を見せつけた。翌日に1敗を喫したものの、西武が勝っている限りは負けることはなかった。
ソフトバンクが月曜日のロッテ戦を落として、ゲーム差は0.5となったが、「これからが面白くなる」と栗山が予言した通りの展開で、今季最後の直接対決を迎えるのである。
振り返ると、昨年9月の天王山では西武が5勝1敗と完全勝利を挙げた。
しかし、クライマックス・シリーズではソフトバンクが西武を敵地で圧倒。両者には浅からぬ因縁がある。
11日の予告先発はソフトバンクが高橋礼、西武はニールと発表されている。
すでに11勝を挙げている高橋礼は、そのうち4勝が西武戦。思えば、昨年のCSで、ソフトバンクの日本シリーズ進出が決まった試合で先発したのが高橋だった。西武側からすれば天敵とも言える存在だ。さらに2戦目は前回ノーヒッターの千賀が先発する可能性もあるとのことだ。
一方、ニールは6月の一軍復帰から8連勝と好調をキープしている。ソフトバンク戦は1試合のみだが、しっかりとゲームを作って勝ち投手になっている。強力打線から凡打の山を築いてチームにリズムを呼び込みたい。
昨季、リーグ優勝しながら日本シリーズ進出を逃した西武には忸怩たる思いがあり、ソフトバンクにしても、長年パ・リーグの王者として君臨してきたプライドがある。
両者のぶつかり合いはどちらに転ぶのか。
今シーズン最大の決戦を迎える。
文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)
【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。