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【ドジャースの「未来予想図」】有望な若手を送り出すマイナー組織が強さの源泉。黄金時代は簡単には終わらない

出野哲也

2020.07.28

安定したプロスペクトの供給がドジャースの強さの源泉。今季代役で開幕投手を務め、5回1失点と好投したメイも、そんな有望株の1人だ。(C)Getty Images

 7年連続で地区優勝を達成する一方で、マイナーからは次代の主力候補が安定的に送り出される――現在のドジャースは、まさしく球団経営の理想を実現している。このような状態にあったチームは、1991年から14季連続地区優勝を成し遂げたブレーブス以来だろう。もっとも、ブレーブスが世界一になったのは95年の一度だけで、そんなところまでドジャースは似てしまっている。

 現有戦力でも十分に強いのは誰もが認めるところ。だが、どうしてもワールドシリーズを制したいとの思いから、2018年のMVP外野手で、現在のMLBで最高級の選手であるムーキー・ベッツを獲得。来オフにはFAとなる予定だったが、7月下旬には12年3億6500万ドル(約390億円)で契約延長したため、その心配もなくなった。

 もっとも、フリードマン編成総責任者はここでも将来への目配せを忘れなかった。チーム最高の有望株であるギャビン・ラックス二塁手とダスティン・メイ投手は絶対に放出しないという方針を掲げ、見事にそれを実行してみせたのだ。ベッツとの交換で差し出した2人の有望株とアレックス・バーデュゴは、好素材ではあってもアンタッチャブルな存在ではなく、ダメージはそれほど大きくない。おまけに、レッドソックスとツインズの間のゴタゴタに乗じて、前田健太との交換で豪腕ブルスダー・グラテロル獲得にまで成功した。
 
 ベッツの例に代表されるように、大物選手を獲得する際でもFA市場ではなくトレードを駆使するのがフリードマン流。また、他球団の編成トップと比べても、超大型契約を嫌う傾向はかなり強い。ベッツの大型契約はあくまで例外だ。

 興味深いのは自前で育てた選手にも同じ傾向が言えることで、ジョク・ピーダーソン外野手やコリー・シーガー遊撃手は、長期契約を結ばないままFA権取得が間近に迫っている。そのため、ベッツ以外の契約は、現状では最も長いものでも23年までとなっている。

 極めて健全な財政状態ではあるが、19年MVPのコディ・ベリンジャーと、若手エース右腕のウォーカー・ビューラーに関しては、できれば早めに囲い込んで今後の戦力展望をより明確にしておきたいところだ。いずれにせよ、プロスペクト安定供給の流れが途切れないように気を配ってさえいれば、ドジャースの黄金時代はそう簡単には終わらないだろう。

文●出野哲也

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