パ・リーグの首位攻防戦第2戦は、ソフトバンクが3−1で競り勝ち、優勝マジック「12」を点灯させた。
ノーヒッター右腕のさらなる底力を見た。
ソフトバンクの先発・千賀滉大は前回登板のノーヒッター(9月6日ロッテ戦)の際、133球を投じた。その日から中5日と間隔を詰めての登板だったが、その影響を微塵も感じさせなかった。序盤から飛ばし、4回まで西武打線をパーフェクト。“山賊打線”を圧倒する支配的なピッチングには畏怖さえ感じた。
最速158kmを計測したストレート、2つの変化・球速帯を使い分けるフォーク&スライダー。丁寧に低めに決め、2試合連続の大記録達成の予感すらあった。
ただ、西武もなかなか折れなかった。先発の十亀剣が初回から安打を浴びながらも粘り強く投げ、逆にそれが厄介だった。ソフトバンクは5回までに8安打を浴びせたがあと一本が出ず、ヤキモキとさせる展開だった。 大投手の宿命ともいうべきか。好投手ほどに援護点をもらえないという展開が野球の中では往往にしてある。千賀は前回のノーヒッターの時しかり、かつてのダルビッシュ有しかり。野球の神様は大投手へ成長するための関門のように、エースに修羅場を用意する。
チャンスを作りながら無得点の展開は、まさに試練だった。千賀には重苦しさがあったはずだ。しかし、それでも崩れなかった
そして、8回表、ついに試合が動く。
ソフトバンクは先頭のグラシアルが左翼スタンドに飛び込む豪快な一発を放り込む。続く4番・デスパイネがセンター前ヒット打で出塁すると、柳田悠岐も続いてチャンス拡大。無死一、三塁となって、7番・松田宣浩の犠飛で1点を追加。試合は決まったようなものだ。
それでも、8回裏は西武の反撃を受けた。
千賀は2死から金子侑司に四球を出すと、続く・秋山翔吾に右中間を破るタイムリー二塁打を打たれた。ただ、差は1点になったが、2番・源田壮亮をキャッチャーフライ。エースは最後まで折れなかった。
千賀は8回を投げ切って4安打1失点。「大記録のあと」、「中5日のマウンド」、「前日に首位を明け渡す」。そういった厳しい環境での登板だったにもかかわらず、千賀は最後まで崩れなかった。
前日、対西武戦の成績が良かった高橋礼に土がついてソフトバンクは敗れていた。もし、エースの千賀も敗れるとなると、ペナントの趨勢は圧倒的不利な状況に立たされていただろう。
それを千賀が止めた。
エースの底力を見た試合だった。
文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)
【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。
ノーヒッター右腕のさらなる底力を見た。
ソフトバンクの先発・千賀滉大は前回登板のノーヒッター(9月6日ロッテ戦)の際、133球を投じた。その日から中5日と間隔を詰めての登板だったが、その影響を微塵も感じさせなかった。序盤から飛ばし、4回まで西武打線をパーフェクト。“山賊打線”を圧倒する支配的なピッチングには畏怖さえ感じた。
最速158kmを計測したストレート、2つの変化・球速帯を使い分けるフォーク&スライダー。丁寧に低めに決め、2試合連続の大記録達成の予感すらあった。
ただ、西武もなかなか折れなかった。先発の十亀剣が初回から安打を浴びながらも粘り強く投げ、逆にそれが厄介だった。ソフトバンクは5回までに8安打を浴びせたがあと一本が出ず、ヤキモキとさせる展開だった。 大投手の宿命ともいうべきか。好投手ほどに援護点をもらえないという展開が野球の中では往往にしてある。千賀は前回のノーヒッターの時しかり、かつてのダルビッシュ有しかり。野球の神様は大投手へ成長するための関門のように、エースに修羅場を用意する。
チャンスを作りながら無得点の展開は、まさに試練だった。千賀には重苦しさがあったはずだ。しかし、それでも崩れなかった
そして、8回表、ついに試合が動く。
ソフトバンクは先頭のグラシアルが左翼スタンドに飛び込む豪快な一発を放り込む。続く4番・デスパイネがセンター前ヒット打で出塁すると、柳田悠岐も続いてチャンス拡大。無死一、三塁となって、7番・松田宣浩の犠飛で1点を追加。試合は決まったようなものだ。
それでも、8回裏は西武の反撃を受けた。
千賀は2死から金子侑司に四球を出すと、続く・秋山翔吾に右中間を破るタイムリー二塁打を打たれた。ただ、差は1点になったが、2番・源田壮亮をキャッチャーフライ。エースは最後まで折れなかった。
千賀は8回を投げ切って4安打1失点。「大記録のあと」、「中5日のマウンド」、「前日に首位を明け渡す」。そういった厳しい環境での登板だったにもかかわらず、千賀は最後まで崩れなかった。
前日、対西武戦の成績が良かった高橋礼に土がついてソフトバンクは敗れていた。もし、エースの千賀も敗れるとなると、ペナントの趨勢は圧倒的不利な状況に立たされていただろう。
それを千賀が止めた。
エースの底力を見た試合だった。
文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)
【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。