今や球界最高峰の本格派左腕、と言って差し支えないだろう。シアトル・マリナーズの菊池雄星のことだ。
今季2先発を終えて0勝0敗、防御率4.66の数字を見れば、「おいおい何を言っているんだ」と思うかもしれない。しかし、前回登板のオークランド・アスレティックス戦は6.0回無失点、3安打1四球9奪三振という素晴らしいピッチングを披露。その結果はもちろん、何より投げているボールは、メジャー1年目から数段上のレベルにまで昇華しているのだ。
3年4300万ドル(約46億円)+αの大型契約で渡米した昨季は、完封勝利を挙げるなど時折り素晴らしい投球を見せたものの、161.2回で36被弾を浴びて防御率5.46、被本塁打率2.00はメジャーワースト級。各種媒体から「契約は失敗だった」「不良債権」と厳しい論調が寄せられた。
平均92.5マイル(148.9キロ)の快速球は、日本ではトップクラスのスピードではあるものの、メジャーでは凡庸。被打率.326、19本塁打と痛打され、軸となる速球の優位性を失えば、それを生かすための変化球も効力がどんどん色褪せていった。そして昨オフ、菊池は業務提携しているデータ会社とともに、新しい投球フォームに着手。テイクバックの際に左腕を身体から離し、右手をやや高く上げるような新フォームは、あのダルビッシュ有(シカゴ・カブス)をして「ここまで変えられるってマジですごい」と驚愕したほどだった。
果たして、効果はてきめんだった。まだ2登板とはいえ、4シームの平均球速は92.5マイル(148.9キロ)から95.5マイル(153.7キロ)へと、約5キロのスピードアップに成功。この数字は今季の先発投手全体12位に位置し、左腕ではメジャー2位。あのダルビッシュを0.3マイル上回る数字を計測している。そして、新たに取り入れたカッターも平均92.8マイル(149.3キロ)と高速化に成功。こちらもメジャー2位の速度をマークするなど、文字通り今年の菊池は「メジャー屈指の本格派投手」になっているのだ。
前回登板後、菊池は「スライダー(カッター)だけでなく、速球の平均球速を上げることがオフシーズンの一番の目標でした」と語った。その目標設定を見誤れば、得られるバックも想定したものと様変わりしてしまう。しかし、今年の登板を見るに、菊池は"正しい"目標設定を行い、多大な報酬を得ようとしている。
それは、今年の2登板で一度もホームランを許していないという事実からも、垣間見えるのではないか。ひと味もふた味も違う菊池の投球に、今後も目が離せない。
文●新井裕貴(SLUGGER編集部)
【PHOTO】世界中から猛者が大集結!ダルビッシュ、田中らも活躍するMLBの投手を一挙紹介!
今季2先発を終えて0勝0敗、防御率4.66の数字を見れば、「おいおい何を言っているんだ」と思うかもしれない。しかし、前回登板のオークランド・アスレティックス戦は6.0回無失点、3安打1四球9奪三振という素晴らしいピッチングを披露。その結果はもちろん、何より投げているボールは、メジャー1年目から数段上のレベルにまで昇華しているのだ。
3年4300万ドル(約46億円)+αの大型契約で渡米した昨季は、完封勝利を挙げるなど時折り素晴らしい投球を見せたものの、161.2回で36被弾を浴びて防御率5.46、被本塁打率2.00はメジャーワースト級。各種媒体から「契約は失敗だった」「不良債権」と厳しい論調が寄せられた。
平均92.5マイル(148.9キロ)の快速球は、日本ではトップクラスのスピードではあるものの、メジャーでは凡庸。被打率.326、19本塁打と痛打され、軸となる速球の優位性を失えば、それを生かすための変化球も効力がどんどん色褪せていった。そして昨オフ、菊池は業務提携しているデータ会社とともに、新しい投球フォームに着手。テイクバックの際に左腕を身体から離し、右手をやや高く上げるような新フォームは、あのダルビッシュ有(シカゴ・カブス)をして「ここまで変えられるってマジですごい」と驚愕したほどだった。
果たして、効果はてきめんだった。まだ2登板とはいえ、4シームの平均球速は92.5マイル(148.9キロ)から95.5マイル(153.7キロ)へと、約5キロのスピードアップに成功。この数字は今季の先発投手全体12位に位置し、左腕ではメジャー2位。あのダルビッシュを0.3マイル上回る数字を計測している。そして、新たに取り入れたカッターも平均92.8マイル(149.3キロ)と高速化に成功。こちらもメジャー2位の速度をマークするなど、文字通り今年の菊池は「メジャー屈指の本格派投手」になっているのだ。
前回登板後、菊池は「スライダー(カッター)だけでなく、速球の平均球速を上げることがオフシーズンの一番の目標でした」と語った。その目標設定を見誤れば、得られるバックも想定したものと様変わりしてしまう。しかし、今年の登板を見るに、菊池は"正しい"目標設定を行い、多大な報酬を得ようとしている。
それは、今年の2登板で一度もホームランを許していないという事実からも、垣間見えるのではないか。ひと味もふた味も違う菊池の投球に、今後も目が離せない。
文●新井裕貴(SLUGGER編集部)
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