MLB

大谷翔平が輝くのは「投手専念」。打者としては“中の上”、投手ならサイ・ヤング賞も狙えるはず

豊浦彰太郞

2020.08.12

再びの故障禍で大谷の二刀流問題が再燃。現地では打者専任を勧める声が多いが……。(C)Getty Images

 大谷翔平はキャリアの分岐点に差し掛かった。内外のメディアで打者一本に絞ってはどうか、という意見が目立つ。果たしてそれは正しいのだろうか。

 2018年10月のトミー・ジョン手術からの復活を期す今季、大谷は「Disaster(大惨事)」としか言いようがない登板が続いた。2登板後のMRI検査で、右回内屈筋群の損傷が判明。投球再開まで4~6週間必要とのことで、超短期の今季中の復帰は叶わぬことが決定した。確かに打者専念の声が上がるのも理解できる。

 もともとぼくは、二刀流には懐疑的だった。球歴をそのスタイルで全うすることは現実的ではないし、そのゴールは何なのかが不透明だからだ。かつてイチロー氏が提言した「今季は投手、来季は打者」という出場法を採らぬ限り、規定の投球回数にも打席数にも達することは難しい。これが、本人の本当の幸せや利益につながるのか。この類稀なる才能を野球界は最大限に享受できると言えるのだろうか。

 彼の二刀流へのチャレンジは、今世紀の野球界で最も偉大な試みの一つだが、これまで投打ともしっかり働いたと言い切れるシーズンは、日本ハム時代の一度だけ。投手とDHでベストナインに選出され、MVPを受賞するなど、もはや「マンガのよう」な驚愕のパフォーマンスを見せた2016年だけだろう。その後は、4シーズン連続で大きな故障を経験したことになる。その理由としては、投打兼任の負担が挙げられるかもしれない。
 
 だから、多くの専門家やファンが、二刀流との決別を勧めるのだけれど、ぼくはその場合、「打者ではなく投手に専念」してほしいと思っている。

 個人的には、打者・大谷には少々物足らなさを感じる。反対方向に本塁打が打てるのは美点だが、ポイントが近く窮屈なスイングゆえか、彼の本塁打にはしっかり引っ張った強烈なライナーや、大きな放物線を描いてライトスタンドに着弾するものが少ない。打球の初速はメジャー有数ではあるものの、その数字を感じさせる豪快な一発は多くない。

 主観ではなく、数値ではどうか。大谷はトミー・ジョン手術からのリハビリ中のため打者に専念した昨季、DHとして425打席に立ち、OPSは.848だった。これは、メジャー全体の400打席以上の207人中69位、DHの16人中では8位だ。恥ずべき成績ではないが、超一流のそれではない。
 
 では、メジャーでの2年間通算ではどうか。792打席でOPSは.883。これは750打席以上の200人中24位で、DHの11人中4位と、かなり上位に属する。やはり2年連続でそれなりの結果を残すのは並大抵ではないし、大谷はそれを成し遂げた限られたエリートの一人と言えそうだ。
 
NEXT
PAGE
元々は投手として評価されていた