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プロ野球

鷹の打撃職人・長谷川勇也を襲ったまさかのコロナ禍。試練を乗り越え職人魂を見せられるか

喜瀬雅則

2020.08.14

野球に対する姿勢は自他ともに厳しい、ストイックな仕事人の長谷川。コロナ禍で誰よりも本人が悔しい思いをしているに違いない。写真:山崎賢人(THE DIGEST編集部)

野球に対する姿勢は自他ともに厳しい、ストイックな仕事人の長谷川。コロナ禍で誰よりも本人が悔しい思いをしているに違いない。写真:山崎賢人(THE DIGEST編集部)

「職人気質」。 長谷川勇也という男の生き様は、まさにこの四文字の通りだ。口数は多くない。むしろ、黙して語らない。喜怒哀楽も、あまり表に出ない。

 2月の宮崎キャンプ。西に日が傾き始めたころ、ふと室内練習場に足を運ぶと、一心不乱にティー打撃を繰り返す背番号24の姿がある。その時にも、気合の大声を上げたり、詰まった打球に顔をしかめたりするわけでもない。構える。振る。打つ。基本動作を、体の隅々にまで刷り込ませるかのように、黙々と打ち続ける。野球に対する真摯な姿勢。自らへ課す厳しさへの裏付けが、その行動に満ちあふれている。だから、この男の言葉には、説得力がある。

「お前、そんな態度で野球をやるんなら、三軍へ行け」

 長谷川が、気持ちのこもっていないスウィングを見せた若手野手を怒鳴りつけたのは、昨季のウエスタン・リーグでの試合中、ベンチ内でのことだったという。「ハセがおったら、もうこっちは何も言わなくていいんだよ。若い選手にそうやって直接、本気で言ってくれるんやから」と、小川一夫二軍監督がそのシーンを思い出しながら長谷川の“存在感”を語ってくれた。
 
 契約更改後の会見で、若手への苦言が口を突いて出たこともあった。

「もうちょっと意識を高く持ってやってほしい。僕なりに感じていることですが、何のためにユニフォームをもらってやっているのか。何のためにプロ野球に入ってきたのか。漠然とやっているようにしか見えない選手もいる。そういう選手を見ると、負けちゃいけないし、負けるわけがない、技術的にも」

 持てる能力、そして技術を、自分自身で磨いていく。そんなたゆまぬ向上心こそが、プロには不可欠だ。それが感じられない一部の若手選手の言動に、長谷川は我慢がならない。試合中の怒声は、すっかりベテランと呼ばれる年齢になった男の、使命感に突き動かされた“心の叫び”でもあるのだ。

 2013年に打率.341&198安打で首位打者と最多安打のタイトルに輝いた男も、14年、17年と2度の右足首手術。17年以降の3年間は、計103試合の出場にとどまっていた。だが、昨年の夏前あたりから右足首の状態は好転しつつあった。「良くなってきた。手術してから、一番ええんと違うかな」と、その復調を見てとっていたのは、大道典良二軍打撃コーチだ。
 

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