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プロ野球

藤浪だけじゃない、今年「やっと勝てた」選手たち。NPB最長ブランクは16年!?

SLUGGER編集部

2020.08.22

692日ぶりの喜びに浸かった藤浪。しかし勝利の“ブランク”には、上には上がいる。写真:山手琢也

692日ぶりの喜びに浸かった藤浪。しかし勝利の“ブランク”には、上には上がいる。写真:山手琢也

 8月21日、阪神・藤浪晋太郎が敵地でのヤクルト戦で2018年9月29日の中日戦以来、692日ぶりの勝ち星を手にした。ここ数年は故障、制球難、新型コロナに遅刻と、高卒1年目から3年連続2ケタ勝利を挙げた天才右腕の姿を見せることはできていなかった。しかし今季は開幕4連敗スタートとなったものの、力強い投球が蘇り、多くのファンに「今年の藤浪は違う!」と思わせるには十分なピッチングを披露してきた。

 そして21日、6.1回6奪三振4失点(自責2)の粘投を見せ、またバットでも2回、38イニング連続無得点のチームに待望のスコアをもたらすタイムリーを放つなど、約2年ぶりの白星に花を添えた。試合後、藤浪は「2年間くらい勝てなかったので、すごく長かったなという気持ちと、今シーズンもなかなか勝てない投球が続いてたので、やっと勝てたかという気持ちが一番強いです」と喜びを口にしたが、今年は藤浪と同じように「やっと勝てた」投手が何人も出ている。

 藤浪と同じように甲子園を沸かせた安楽智大(楽天)は、7月17日の西武戦で2017年6月30日以来1112日ぶりの勝利を挙げた。以前のような剛球は鳴りを潜めた右腕は、先発の弓削隼人が打球直撃で降板した後を引き継ぐと、白星が転がってきたのだった。

 中日では2人の投手が歓喜に沸いた。一人は左腕の松葉貴大だ。昨季途中にオリックスから加入した松葉は7月16日のDeNA戦で5.1回1失点の投球を見せ、2018年9月18日の楽天戦以来、666日ぶりとなる移籍後初勝利を手にした。試合後、「込み上げてくるものがありました」と、その目に光るものがあった。そして8月11日の広島戦では、15年に19セーブを挙げた元守護神の福谷浩司も1173日ぶり、先発としては初勝利を挙げている。
 
 福谷の3年以上にわたるブランクも相当な長さに感じるが、プロ野球記録は途方もない数字である。約16年、『5874日』ぶりに白星を挙げたのが2010年の大家友和(横浜)だ。4月7日のヤクルト戦で記録されたこの“快挙”は、1994年4月29日の同カード以来という運命めいたものがあるとはいえご存知の通り、大家はMLBで10年プレーしていることが背景にある。

 同じように松坂大輔(現・西武)も中日時代の2018年4月10日に、NPBでは4241日ぶりの勝利を挙げた。両者の相違点があるとすれば、大家はNPB復帰後の最初の登板で勝ち投手になったのに対し、松坂は15~17年に在籍したソフトバンクでは故障を繰り返し、1勝はおろか、一軍登板もわずか一回だった点か。

“純然”たるプロ野球記録は、2013年7月3日にヤクルトの阿部健太が記録した『3580日』が該当する。2002年ドラフト4巡目で近鉄に入団した右腕は1年目に2勝をマーク、しかし翌04年、球界再編問題による近鉄ラストイヤーに、阿部は“近鉄最後の敗戦投手”になると、ここから白星が遠ざかっていき、オリックス、阪神を経て戦力外通告から拾われたヤクルトで約10年ぶりの勝利投手になった。これは阪神時代に自身のコーチだった遠山奬志の3507日(遠山は95~97年に野手転向)を超えるスパンであり、阿部自身も試合後、「珍記録ですね」と笑っていた。

 藤浪の692日ぶりの勝利というのも、彼自身の資質もあってか相当な長さに感じられた。それは当人ならなおさらそうだろう。次の白星は“6日ぶり”になるのか、藤浪の次回の登板にも期待したい。

構成●SLUGGER編集部
 
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