MLB

MLB史上初の「40歳のホームラン王」誕生? ”不惑の大砲”クルーズの活躍の秘訣は”仮眠”にあり

宇根夏樹

2020.09.04

40歳になってもクルーズのパワーは衰え知らず。このままいけば史上初の、40代の本塁打王が誕生するかもしれない。(C)Getty Images

 ネルソン・クルーズ(ツインズ)にとって、年齢は関係ないようだ。7月1日に誕生日を迎え、今シーズンの開幕を40歳で迎えた。チームを率いるロッコ・バルデリ監督より2歳上だが、衰えの気配はまったく見えない。現地時間9月3日時点で13本塁打を放ち、マイク・トラウト(エンジェルス)ルーク・ボイト(ヤンキース)、テオスカー・ヘルナンデス(ブルージェイズ)と並んでリーグトップに立っている。

 クルーズは遅咲きの選手だ。2005年にメジャーデビューした時にはすでに25歳で、定着できたのはそれから4年後の09年だった。29歳だったこの年は33本塁打を放ってブレイクを果たしたが、その後4年間は20本台にとどまった。真の意味で長距離砲として開花したのは14年。この年、40本塁打でタイトルを獲得したクルーズは、そこから昨シーズンまで、6年続けて37本塁打以上を記録した。39歳だった昨年も、41本塁打を放っている。

 アルバート・プーホルス(エンジェルス)と比べると、クルーズの遅咲きぶり、そしていかに衰えないかがよく分かる。この2人は、どちらも1980年にドミニカ共和国で生まれ、右の強打者という点も共通する。プーホルスは00~09年の10年間で、366本塁打を量産。一方、クルーズがこの期間に放ったホームランは55本に過ぎない。だが、これが10~19年の10年間となると一変する。プーホルスの290本塁打に対し、クルーズはこの10年間で誰よりも多い346本を記録した。
 
 クルーズは"ブームスティック(ショットガン)"の異名を持つ長くて重いバットを使っていることで有名だが、これを力任せに振るだけのバッターではない。ビデオで相手投手をよく研究し、体調管理にも気を遣っている。試合前に球場の仮眠室で30分から1時間を過ごすのは、マリナーズ時代からの日課だ。昨シーズンから在籍しているツインズでも、契約の際に仮眠室の設置を要望し、ツインズは保管室を転用してそれに応えた。クルーズはアウェーでも、クラブハウスのカウチなどで仮眠をとるという。

 2年前にESPNのエディ・マッツが書いた記事によると、眠っている時の夢に、当時チームメイトだったイチローが出てきたことがあり、その日の試合ではまるでイチローのように打つことができたという(この話はクルーズのジョークという可能性もあるが)。この仮眠こそが、クルーズの"不老"の秘訣なのかもしれない。

 もし今季、クルーズが自身2度目の本塁打王を獲得すれば、最高齢でのタイトル獲得記録を塗り替える。1985年にダレル・エバンス(タイガース)が38歳で40本塁打を放ち、ホームラン王になったのがこれまでの最高齢記録だ。今季は短縮シーズンだが、それでも史上初の40歳以上での本塁打王となれば、文句なしの偉業と言えるだろう。

文●宇根夏樹

【著者プロフィール】
うね・なつき/1968年生まれ。三重県出身。『スラッガー』元編集長。現在はフリーライターとして『スラッガー』やYahoo! 個人ニュースなどに寄稿。著書に『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

【PHOTO】スター選手が勢ぞろい! 2020MLBプレーヤーランキングTOP30
 
NEXT
PAGE
【動画】40歳になっても健在!“不惑の大砲”クルーズの豪打