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大谷獲得には成功したが…エンジェルスGM解任の理由

宇根夏樹

2020.10.01

解任されたエプラーGM(左)。大谷獲得は大きな功績だが、一度もチームをポストシーズンに導けなかった。(C)Getty Images

 レギュラーシーズンの終了と同時に、エンジェルスはビリー・エプラーGMを解任した。今年7月に来シーズンまで契約を延長したばかり。2か月後の解任は唐突な気もするが、オーナーであるアルトゥーロ・モレノの気持ちが変わったのだろう。エプラーのGM就任は2015年10月。以降の5シーズンとも、エンジェルスは負け越した。一度もポストシーズンへ進めなかったという点では、すでに球界最高の選手となっていたマイク・トラウトの全盛期を半分無駄にしたとも言える。それだけに、今回の決定も不思議はない。事実、以前から「ポストシーズンを逃せば解任」との噂は出ていた。

 エプラーの最大の功績は、昨シーズンの開幕前にトラウトと12年4億2650万ドルの延長契約を交わしたことだ。契約期間はあと10年残り、トラウトといえども不良債権化の可能性はあるが、至宝の流出をとどめたのは大きい。17年オフの大谷翔平獲得も成功に数えられる。アンドレルトン・シモンズ(ブレーブス→15年オフ)やトミー・ラステラ(カブス→18年オフ/現アスレティックス)の獲得も成功だろう。昨オフに7年2億4500万ドルで迎え入れたアンソニー・レンドーンも、1年目を見る限りではうまくいっている。
 
 前任のジェリー・ディポート(現マリナーズGM)が枯渇させたファーム組織をある程度立て直したことも評価に値するが、一方で就任当時から課題だった先発投手陣の再建はまったくと言っていいほど果たせなかった。トラウトやレンドーン、ジャスティン・アップトンに大型延長契約を与えたことから分かるように資金は豊富にあるのだが、オーナーの意向もあってか投手の大型補強には消極的で、ティム・リンスカム、リッキー・ノラスコ、トレバー・ケイヒル、マット・ハービー、フリオ・テラーンといった比較的安価な中堅/ベテランを短期契約で次々に獲得しては失敗の繰り返し。成功と言えそうなのは、昨オフにマイナー4選手と交換でオリオールズから得たディラン・バンディくらいだ。

 なお、後任候補には、デーブ・ドンブロウスキの名前が浮上している。ドンブロウスキはマーリンズ(1997年)とレッドソックス(18年)でワールドチャンピオンとなり、タイガースでも2度のリーグ優勝(06、12年)と実績は十分。特に大胆なトレードで大物選手を獲得することで知られている。

文●宇根夏樹

【著者プロフィール】
うね・なつき/1968年生まれ。三重県出身。『スラッガー』元編集長。現在はフリーライターとして『スラッガー』やYahoo! 個人ニュースなどに寄稿。著書に『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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