MLB

勝負を分けたレイズのホームスティール。A-RODは「観客の少なさが失敗につながった」、オティーズは「一塁のファインプレー」と分析

SLUGGER編集部

2020.10.26

勝負を分けたマーゴ決死のホームスティール。伝説の打者たちが独自の見解を披露した。(C)Getty Images

 現地時間25日、メジャーリーグはワールドシリーズ第5戦が行われ、ロサンゼルス・ドジャースが4対2でタンパベイ・レイズに勝利。シリーズ成績を3勝2敗として、1988年以来の世界一に王手をかけている。

 過去4戦は乱打戦の様相で、昨日の試合はあまりにも劇的なエラーによるサヨナラ決着となった。しかしこの試合は、ドジャース先発のクレイトン・カーショウがいつ崩れてもおかしくないような状態でも粘り強く6回途中まで2失点にまとめ、低調なブルペンがこれを守り切り、見事に勝利した形だ。

 その中でも最大のハイライトは、ドジャースが3対2でリードして迎えた4回だった。レイズは先頭のマニュエル・マーゴがフルカウントから四球で出塁すると、二塁への盗塁に成功。そしてキャッチャーからの送球を二塁手がこぼす間に三塁まで進み、一打同点のチャンスを作る。そしてカーショウは、続く打者を2球で追い込みながらも、またもフルカウントから四球を出し、無死一、三塁という絶体絶命のピンチを招く。

"ポストシーズンに弱い"カーショウなら、ここであっさり失点してしまうところだが、ここから遊撃フライ、三振に打ち取り、2死までこぎ着ける。そして8番に初球ストライクを取ってセットポジションにゆったり入った場面で「事件」が起きた。

 何と、背後の三塁走者であるマーゴが勇猛果敢に本塁へ突入したのだ。しかし、カーショウは慌てながらもキャッチャーへ送球し、間一髪アウトに仕留めて最大の窮地を脱するのだった。
 
 スローで見てもかなり際どいホームスティールに、SNS界隈でもセーフ/アウト論争が勃発。今年のサイ・ヤング賞候補に挙げられているトレバー・バウアー(シンシナティ・レッズ)も「タッチが見えなかった」と言うほどで、本当にギリギリのプレーだった。もし単独でホームスティールに成功していれば、1955年のジャッキー・ロビンソン以来の快挙ということで、試合展開的にも勝負を分けたスーパープレーだった。

 果たして試合後には、マーゴの本盗はすべきかどうかに賛否両論の声が集まったが、現在FOXスポーツで解説を務める通算696本塁打のアレックス・ロドリゲスは"独自"の見解を披露している。氏いわく、成否を分けたのは「観衆の少なさ」だという。

「(無死一、三塁の場面で)誰もが点が入ると思っていたが、ポップフライ、三振で分からなくなった」ことが試行の理由だとA-ROD。そして、「一つのポイントはファンがいないスタジアムだったことが挙げられる」とし、「普通のポストシーズンであれば満員の観客で、選手は声を聞くことができない。もし走者がゆっくりと狙っていたら……」と分析した。

 そして、同じくA-RODとともに解説を務める大打者のデビッド・オティーズは、「カーショウも言っていたが、一塁の声があったと。セットした時、彼には走者の動きが見えていない。プレーを振り返ると、一塁のマックス・マンシーが『来てるぞ、来てるぞ』。これがキープレーだった」と言う。

 さすがスーパースターたちの観察眼と言えるだろう。共通しているのは、ともに「サプライズ」だったという点で、マーゴの狙い自体は素晴らしかった讃えてもいる。

 一方でカーショウは、2015年にホームスティールを仕掛けられたことがあり、それがきっかけで同じシチュエーションになったら、一塁手への声掛けや身振りに注力するようになったという。不測の事態への準備が、歴史的なプレーの成功を防いだ要因にもなっていたようだ。

構成●SLUGGER編集部

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