プロ野球

有識者ARAのドラフト通信簿:“本命”を外しても巨人は最高評価。一方、佐藤を引き当てた阪神、早川を引き当てた楽天の評価は?

ARA

2020.10.27

4球団競合の佐藤(近畿大)は阪神が当たりクジを引いた。一方、巨人は外してしまったが……?©NPB/BBM2020

 プロ野球ドラフト会議が26日、無事終了した。この記事では各球団の今ドラフトを、「ドラフトで補強したポイント」を基準にA+~D-の8段階で採点する。

▼日本ハム 評価:A+
1位:伊藤大海(投手/苫小牧駒澤大)
2位:五十幡亮汰(外野手/中央大)
3位:古川裕大(捕手/上武大)
4位:細川凌平(内野手/智辯和歌山高)
5位:根本悠楓(投手/苫小牧中央高)
6位:今川優馬(外野手/JFE東日本)

 今年のドラフトで最も成功した球団の一つ。事前に指名を公言していた伊藤を見事一本釣りに成功。外野でも西川遥輝の後継者となり得る五十幡や、社会人屈指のスラッガー今川を指名することができた。加えて今ドラフトではトップクラスの攻撃型捕手・古川、俊足巧打の内野手・細川、高校生離れしたコントロールと球速をもつ根本と、いずれもこれ以上ない選択。さらに伊藤、根本、今川は地元北海道出身の選手で、新球場開場後を見据えたビジネス面での評価も高い。

▼西武 評価:A+
×  早川隆久(投手/早稲田大)
1位:渡部健人(内野手/桐蔭横浜大)
2位:佐々木健(投手/NTT東日本)
3位:山村崇嘉(内野手/東海大相模高)
4位:若林楽人(外野手/駒沢大)
5位:大曲錬(投手/福岡大準硬式)
6位:タイシンガーブランドン大河(内野手/東京農業大北海道オホーツク)
7位:仲三河優太(外野手/大阪桐蔭高)

 これまでのドラフトでは投手中心の指名を続けていたが、今年は秋山翔吾のレッズ移籍で打線の得点力が減少し、栗山巧・中村剛也とベテラン頼りの課題も露呈したことで、野手5名も指名した。渡部を含めた全員が長打力を評価される選手で、若林のように俊足を兼ね備えた選手も多く、山村やタイシンガーは複数の守備位置をこなす器用さを併せ持つ。球団内の競争が激化することで、他の選手にとっても良い刺激となるだろう。
 
▼阪神 評価:A+
1位:佐藤輝明(内野手/近畿大)★
2位:伊藤将司(投手/JR東日本)
3位:佐藤蓮(投手/上武大)
4位:榮枝裕貴(捕手/立命館大)
5位:村上頌樹(投手/東洋大)
6位:中野拓夢(内野手/三菱自動車岡崎)
7位:高寺望夢(内野手/上田西高)
8位:石井大智(投手/四国IL・高知)

 4球団競合の末に交渉権を獲得した佐藤は、甲子園の浜風を無視できる数少ないスラッガーで、今後のドラフトや外国人獲得に幅広い選択肢を与えることだろう。一方で榮枝、中野、高寺は守備の評価が高く、現在の阪神にはいないタイプの選手だ。投手も即戦力の伊藤と村上に、伸びしろのある佐藤、石井、さらに変則左腕の岩田将貴(育成1位/九州産業大)とバリエーション豊か。村上と岩田は怪我の懸念もあるが、これも投手運用に余裕のある阪神ならではか。

▼巨人 評価:A+
×  佐藤輝明(内野手/近畿大)
1位:平内龍太(投手/亜細亜大)
2位:山崎伊織(投手/東海大)
3位:中山礼都(内野手/中京大中京高)
4位:伊藤優輔(投手/三菱パワー)
5位:秋広優人(内野手/二松学舎大付高)
6位:山本一輝(投手/中京大)
7位:萩原哲(捕手/創価大)

 ドラフト戦略が最も見事にハマった球団だ。佐藤輝明の抽選は外したが、「その場合は即戦力投手」とかねてより公言していた通り、平内、山崎の指名に成功した。特に山崎は早川隆久と並び書された逸材で、経過が順調なら数年後のエースを獲得したも同然だ。2人は故障明けのため、他球団との情報戦を制した雰囲気も強い。また、野手も中山、秋広といった現在のファームにいないタイプを指名した。さらに、育成ドラフトでは阿部慎之助二軍監督が意思決定に携わるなど、"指導者経験"までも積ませてしまう合理性には脱帽するしかない。