MLB

エンジェルスが“常勝軍団”ブレーブスから4人のフロントマンをヘッドハンティング。低迷脱出の切り札となるか

宇根夏樹

2020.11.30

ミナシアン新GMの就任をはじめ、フロントに大きな動きがあったエンジェルス。近年の低迷から脱却することはできるか。(C)Getty Images

 この秋、ブレーブスのアシスタントGMからエンジェルスのGMに就任したペリー・ミナシアンは「再建に5年、7年、10年を費やす状態ではない。この組織は全体として、非常に素晴らしいことを成し遂げる、その目前にいる」と語った。つまり、来シーズンの目標は、2014年を最後に遠ざかっているポストシーズン進出ということだ。

 そして、ミナシアンGMは最初の動きとして、ブレーブスでともに働いていた3人の同僚を呼び寄せた。アレックス・タミンをアシスタントGM、ドミニク・チティをスペシャル・アシスタント、そして、リック・ウィリアムズをスカウトとして雇ったのだ。

 今シーズン、ブレーブスのアレックス・アンソポロスGMの下には、4人のアシスタントGMがいた。そのうちの2人が、ミナシアンとタミンだ。ミナシアンは17年9月、タミンは同じ年の12月と、ほぼ同じ時期にブレーブスに雇用され、肩書きも同じだったが、立場はミナシアンがタミンよりも上に位置していた。従って、ブレーブスからエンジェルスへ移っても、2人の上下関係は変わらない。タミンは選手を評価する能力に優れ、中でも年俸調停の公聴会において手腕を振るってきた。
 
 今季はブレーブスでもスペシャル・アシスタントを務めていたチティは、ブルペンコーチのキャリアが長い。ブレーブスに雇用された19年は、選手育成部門の部長を務めていた。ウィリアムズは14年からずっとブレーブスに在籍する古株で、アマチュア担当のスカウトではなく、メジャーリーガーを視察・評価する役割を担っていた。エンジェルスでも同じ仕事を任されるはずだ。こちらは投手コーチの経験を持ち、育成部門に籍を置いたこともある。

 もちろん、この動きは序章に過ぎない。ただ、ミナシアンGMは「フィールドでチームとして戦うのと同じく、フィールドの外でもチームとして戦う。だから、フロントの人事は非常に重要だ」と語っていた。単純に、気心が知れていて力量もわかっている人物を集めたわけではないのだろう。ブレーブスは14年から4年続けてポストシーズン進出を逃した後、ミナシアンらを雇用したことで、18年から今年まで地区3連覇を果たしている。4人はいわば、ともにブレーブスを"常勝軍団"に育て上げたメンバーだ。

 ミナシアンがアンソポロスGMの右腕として働いてきたように、タミンはミナシアンGMの右腕となることが期待される。ミナシアンGMの「何よりも優先されるのは投手陣」というコメントを聞くまでもなく、エンジェルスの課題が投手陣にあるのは明白だ。補強に加え、現有戦力のレベルアップも求められる。この点において、投手の指導・育成に携わってきたチティとウィリアムズは、極めて重要な役割を担うことになりそうだ。

文●宇根夏樹

【著者プロフィール】
うね・なつき/1968年生まれ。三重県出身。『スラッガー』元編集長。現在はフリーライターとして『スラッガー』やYahoo! 個人ニュースなどに寄稿。著書に『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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