今年のロベルト・クレメンテ賞には、39歳の右腕アダム・ウェインライト(前カーディナルス/現FA)が選ばれた。クレメンテ賞は、慈善活動を精力的に行う選手に贈られ、MVPやサイ・ヤング賞に匹敵するほど名誉あるものとして捉えられている。車を運転中に受賞の知らせを受けたというウェインライトは「木に突っ込みそうになった」とジョークを交えながらも「僕のキャリアの中で最も素晴らしい栄誉」と喜んだ。
ウェインライトは、これまで5回にわたってクレメンテ賞候補にノミネートされてきた。そのことからも窺えるとおり、彼の活動は多岐にわたる。2013年に自身が設立した団体『ビッグリーグ・インパクト』では、南セントルイスでフードバンクと協力し、毎週3000食分のバックパックを提供している。
それだけでなく、アメリカ国外でも精力的に活動。ホンジュラスでは、それまで泥水を飲んでいた地域に数多くの浄水設備を設置し、ハイチでは病院や学校を建設。アフリカでは性的人身売買被害者の支援も行っている。趣味でもあるファンタジー・フットボール("仮想アメフトチーム"を作り、その選手たちの実際のプレーに基づいたポイントを得て、勝敗を決めるゲーム)のチャリティで資金を集め、慈善団体に寄付したりもしている。
こうして彼の活動を振り返ると、今まで受賞していなかったのが不思議なくらいだ。カーディナルスがウェインライトの選出をツイッターで称えた際に「待望の」と形容したのも頷ける。ヤフースポーツのティム・ブラウンは、ウェインライトとともに活動に携わってきた妻ジェリーのこんなコメントを紹介している。「彼はこれまでもずっと、私たちにとってはクレメンテ賞の受賞者だったわ」。
ウェインライトの活動はこれからも続いていくだろう。昨年、ウェインライトはカントリー歌手のガース・ブルックスとともに、食料難の子供たちを救うための『ホームプレート・プロジェクト』を立ち上げた。MLB30球団と50人以上のメジャーリーガーも参加したこのプロジェクトは、新型コロナウイルスのパンデミックによって支援を必要とする人が増えたこともあり、まさにタイムリーな活動となった。ウェインライトを見習って慈善活動をはじめた選手もいるという。メジャー15年間で通算167勝、2度の最多勝を獲得したウェインライトは、グラウンド外でもメジャー有数のヒーローなのだ。
文●宇根夏樹
【著者プロフィール】
うね・なつき/1968年生まれ。三重県出身。『スラッガー』元編集長。現在はフリーライターとして『スラッガー』やYahoo! 個人ニュースなどに寄稿。著書に『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。
【PHOTO】スター選手が勢ぞろい! 2020MLBプレーヤーランキングTOP30
ウェインライトは、これまで5回にわたってクレメンテ賞候補にノミネートされてきた。そのことからも窺えるとおり、彼の活動は多岐にわたる。2013年に自身が設立した団体『ビッグリーグ・インパクト』では、南セントルイスでフードバンクと協力し、毎週3000食分のバックパックを提供している。
それだけでなく、アメリカ国外でも精力的に活動。ホンジュラスでは、それまで泥水を飲んでいた地域に数多くの浄水設備を設置し、ハイチでは病院や学校を建設。アフリカでは性的人身売買被害者の支援も行っている。趣味でもあるファンタジー・フットボール("仮想アメフトチーム"を作り、その選手たちの実際のプレーに基づいたポイントを得て、勝敗を決めるゲーム)のチャリティで資金を集め、慈善団体に寄付したりもしている。
こうして彼の活動を振り返ると、今まで受賞していなかったのが不思議なくらいだ。カーディナルスがウェインライトの選出をツイッターで称えた際に「待望の」と形容したのも頷ける。ヤフースポーツのティム・ブラウンは、ウェインライトとともに活動に携わってきた妻ジェリーのこんなコメントを紹介している。「彼はこれまでもずっと、私たちにとってはクレメンテ賞の受賞者だったわ」。
ウェインライトの活動はこれからも続いていくだろう。昨年、ウェインライトはカントリー歌手のガース・ブルックスとともに、食料難の子供たちを救うための『ホームプレート・プロジェクト』を立ち上げた。MLB30球団と50人以上のメジャーリーガーも参加したこのプロジェクトは、新型コロナウイルスのパンデミックによって支援を必要とする人が増えたこともあり、まさにタイムリーな活動となった。ウェインライトを見習って慈善活動をはじめた選手もいるという。メジャー15年間で通算167勝、2度の最多勝を獲得したウェインライトは、グラウンド外でもメジャー有数のヒーローなのだ。
文●宇根夏樹
【著者プロフィール】
うね・なつき/1968年生まれ。三重県出身。『スラッガー』元編集長。現在はフリーライターとして『スラッガー』やYahoo! 個人ニュースなどに寄稿。著書に『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。
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