メジャーリーグの歴史を彩る名言の一つに、こんなものがある。
「馬も食わないような代物の上ではプレーしたくないね」
1966年、アストロドームにメジャー史上初めて人工芝が敷かれた際に、当時フィリーズの主砲だったディック・アレンが言い放ったものだ。この後、MLBには一時的に人工芝ブームが来るのだが、現在は再び天然芝の球場が大半を占めている。故障リスクの増大もさることながら、無味乾燥で画一的な人工芝には魅力がないと考えられるようになったことが一番大きい。アレンのコメントは、人工芝の味気なさを端的に表現したまさに「名言」だった。
そのアレンが12月7日、78歳で亡くなった。現役時代のアレンは球界きってのトラブルメーカーとしても悪名を馳せていた。練習に遅刻して罰金を科されることは日常茶飯事だったし、ホワイトソックス時代にはスター三塁手のロン・サントとの深刻な確執が問題となって、結局チームにいられなくなってしまった。
殿堂入りできなかったのは、通算1848安打、351本塁打という成績が決め手に欠けていたこともあるが、野球史家ビル・ジェームズをして「メジャー史上における“クソ野郎コンテスト”が開催されたなら、アレンは間違いなく最終候補に残るだろう」と言わしめたほどの問題児ぶりも一つの要因だった。
もっとも、アレンの悪いイメージを形成したエピソードの一部には、誤解によって生じたものもある。たとえば、アレンのイメージが悪化した最初の事件は、65年に起こったフィリーズのベテラン外野手、フランク・トーマスと打撃練習場で殴り合いの喧嘩を演じたことだ。
だが、この件に関してはむしろトーマスの方に非があった。チームメイトの黒人選手をからかったトーマスの言動をアレンが咎め、それに対してトーマスがバットでアレンに殴りかかったのだ。球団はトーマスをトレードでアストロズへ放出し、チームメイトもアレンの振る舞いを支持したが、新聞記者たちは白人のトーマスの肩を持ち、彼を「横暴な黒人選手アレンによって不当にチームから追い出された“殉教者”」に仕立て上げた。
「馬も食わないような代物の上ではプレーしたくないね」
1966年、アストロドームにメジャー史上初めて人工芝が敷かれた際に、当時フィリーズの主砲だったディック・アレンが言い放ったものだ。この後、MLBには一時的に人工芝ブームが来るのだが、現在は再び天然芝の球場が大半を占めている。故障リスクの増大もさることながら、無味乾燥で画一的な人工芝には魅力がないと考えられるようになったことが一番大きい。アレンのコメントは、人工芝の味気なさを端的に表現したまさに「名言」だった。
そのアレンが12月7日、78歳で亡くなった。現役時代のアレンは球界きってのトラブルメーカーとしても悪名を馳せていた。練習に遅刻して罰金を科されることは日常茶飯事だったし、ホワイトソックス時代にはスター三塁手のロン・サントとの深刻な確執が問題となって、結局チームにいられなくなってしまった。
殿堂入りできなかったのは、通算1848安打、351本塁打という成績が決め手に欠けていたこともあるが、野球史家ビル・ジェームズをして「メジャー史上における“クソ野郎コンテスト”が開催されたなら、アレンは間違いなく最終候補に残るだろう」と言わしめたほどの問題児ぶりも一つの要因だった。
もっとも、アレンの悪いイメージを形成したエピソードの一部には、誤解によって生じたものもある。たとえば、アレンのイメージが悪化した最初の事件は、65年に起こったフィリーズのベテラン外野手、フランク・トーマスと打撃練習場で殴り合いの喧嘩を演じたことだ。
だが、この件に関してはむしろトーマスの方に非があった。チームメイトの黒人選手をからかったトーマスの言動をアレンが咎め、それに対してトーマスがバットでアレンに殴りかかったのだ。球団はトーマスをトレードでアストロズへ放出し、チームメイトもアレンの振る舞いを支持したが、新聞記者たちは白人のトーマスの肩を持ち、彼を「横暴な黒人選手アレンによって不当にチームから追い出された“殉教者”」に仕立て上げた。