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【2020日本人メジャーリーガー総括:田中将大】「思い通りにならない一年」でも安定感は健在。得意のはずのプレーオフに落とし穴が…

杉浦大介

2020.12.26

開幕前に頭部打球直撃のアクシデントがあったが、与四球率1.50と投球そのものは安定感があった。(C)Getty Images

開幕前に頭部打球直撃のアクシデントがあったが、与四球率1.50と投球そのものは安定感があった。(C)Getty Images

 2020年は田中将大にとってさまざまな面で「思い通りにならない」一年だった。ヤンキースとの7年契約最終年、しかも昨季はワールドシリーズまであと一歩まで迫っていたこともあり、モチベーションは高かったはずだった。しかし、新型コロナウイルスによるパンデミックのおかげで短縮シーズンに。全選手が同じ条件とはいえ、メジャーデビューから6年連続で2ケタ勝利を続けてきた田中にとって、開幕時点で記録更新が事実上不可能になったのはやはり残念な思いがあったのではないだろうか。

 ようやく開幕が決まっても、不運は続く。7月4日に迎えたサマーキャンプ初日に試合形式の練習でマウンドに立った際、ジャンカルロ・スタントンが放った112マイルの弾丸ライナーが頭を直撃。直後、フィールドは静まりかえり、アーロン・ブーン監督が「(田中の)生命の心配をした」と述べたほどの緊張感がその場を包んだ。軽い脳震とうで済んだのはラッキーではあったが、このアクシデントのおかげで7年目にして初めて開幕ローテーションからも外れた。

 もっとも、復帰後の田中の投球は実は安定感があった。鋭いスライダーと抜群の制球力を武器に、2度目の先発となった8月7日のレイズ戦では5回を1安打無失点。8月26日にはブレーブス戦でも5回無失点、9月1日のレイズ戦でも6回2失点で今季初勝利を挙げるなど、強豪相手にも質の高い投球を続けていた。
 
 結局、レギュラーシーズン中10度の先発機会で9戦は自責点3以下。その過程で、ヤンキース内でもゲリット・コールに次ぐ先発2番手という評価を確固たるものにする。シーズン終了時点で、オフにFAとなってもヤンキースから複数年契約の提示を受けた上での残留は既定路線というのが地元の論調だったのだ。ところが――。

 最後の最後で意外な落とし穴が待っていた。昨季まで通算8戦で防御率1.76と圧倒的な強さを誇ったポストシーズンでまさかの大炎上。インディアンスとのワイルドカード・シリーズ、レイズとの地区シリーズで続けて打ち込まれ、計8イニングで11失点を献上した。

 チームのプレーオフ早期敗退の一因となったことで、シーズン全体の印象も一気に悪くなった感がある。厳しい状況の中でも何とか立て直すことで“らしさ”を示しているようにも見えただけに、最も大事な時期の乱調は残念だった。これもあってか、一時は濃厚と目されていたヤンキースとの再契約も雲行きが怪しくなってきた。

 果たして田中は来年どのチームでプレーするのか。答えが出るのは2021年が明けてからになるかもしれない。

文●杉浦大介

【著者プロフィール】
すぎうら・だいすけ/ニューヨーク在住のスポーツライター。MLB、NBA、ボクシングを中心に取材・執筆活動を行う。著書に『イチローがいた幸せ』(悟空出版 )など。ツイッターIDは@daisukesugiura。
 
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